JR九州と西日本鉄道が13日までに発表した令和4年3月期連結決算は、新型コロナウイルス禍で低迷していた鉄道需要が緩やかに回復するなどし、両社とも2年ぶりの最終黒字となった。ただ、コロナ感染者数は減少と拡大の波を繰り返し、収益確保の見通しが困難な上、長期的には沿線人口の減少で鉄道需要も縮小する。両社とも鉄道収入の減少を見据え、事業構造改革に本腰を入れる。
「企業を運営する上で黒字は大前提。社員の経費節減などの努力が大きかった」
JR九州が10日開いた決算発表の記者会見で、古宮洋二社長は、安堵(あんど)の表情を浮かべた。
同社の4年3月期連結決算は売上高が12・1%増の3295億円、最終利益は132億円(前期は189億円の赤字)だった。3年3月期は株式上場後初の赤字だったが、鉄道需要の回復や保有資産の売却、鉄道を中心にコスト削減を実施したことが寄与した。
鉄道旅客運輸収入は17・1%増の893億円となり、コロナ禍前の2年3月期と比べると、6割の水準にまで戻った。ただ、コロナの影響は依然大きいままで、3年4~9月期は緊急事態宣言の発令などで鉄道収入が伸び悩み、宣言解除で同10~12月期は利用が回復したが、その後は再び感染拡大で落ち込んだ。
同社は鉄道事業の黒字化も命題とするが、4年3月期は220億円の赤字だった。これに対し、古宮氏は「収入が大きく左右されても柔軟に対応できる態勢とする」と述べ、鉄道経費を1割程度削減するなどして、5年3月期は1億円の黒字を確保する目標を掲げた。
5年3月期の連結業績予想は、売上高が15・7%増の3814億円。最終利益は84・9%増の245億円と見込む。収入確保には今年9月に武雄温泉―長崎で開業する西九州新幹線が追い風となる。同社は新たな観光列車の運行などで開業効果を最大限発揮できるよう知恵を絞る。
一方、西鉄が12日に発表した4年3月期連結決算は、売上高が前期比23・4%増の4271億円で過去最高だった。コロナ禍で低迷していた運輸やホテル事業が前期より回復し、国際物流事業が業績を伸ばした。最終利益は98億円の黒字(前期は120億円の赤字)だった。
過去最大の赤字額となった3年3月期からの黒字転換には国際物流事業が貢献した。世界経済の回復などで同事業の売上高は67・1%増の1861億円、営業利益は3倍の114億円と大幅に伸びた。レジャー・サービス業もホテル利用が前期より持ち直し、3年12月に営業を終了した「かしいかえんシルバニアガーデン」(福岡市東区)の閉園特需などもあり、増収となった。5年3月期の連結業績予想は売上高が1・6%増の4341億円、最終利益は26・1%減の73億円と見込む。
一方、鉄道やバス利用は前期からは回復したものの運輸業は46億円の営業赤字を計上した。記者会見した林田浩一社長は「運輸やホテルなどはいまだに赤字が残っている。構造改革を続け、観光需要の戻りを期待して黒字化を達成したい」と語った。
4月には、西鉄が福岡市博多区で三井不動産や九州電力と共同開発した大型商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと福岡」が開業し、多くの客でにぎわう。西鉄はこうした新たな収益源の確保とともに、バス路線の見直しや赤字事業からの撤退を進めてきた。改革を一層進め、持続可能なビジネスモデルの構築を進めている。(一居真由子)