ロシアによるウクライナ侵攻が第二次世界大戦後の国際秩序を激しく揺るがす中、戦後の国際体制を方向づけた米英ソ三巨頭らによる会談議事録の初の全訳『戦後の誕生 テヘラン・ヤルタ・ポツダム会談全議事録』(茂田宏・小西正樹・倉井高志・川端一郎編訳、中央公論新社)が出版された。大戦終結と戦後国際体制の確立に向け、国益と主導権をめぐる応酬からは、巨頭たちの生々しすぎる本音も。今回は米英ソの三巨頭が初めて大戦中に一堂に会したイランの首都テヘランでの会談(1943年11~12月)での主な発言を紹介する。
第二戦線の攻防
太平洋や欧州での戦況が連合国側に有利に展開する中で開催されたテヘラン会談には、米国のルーズベルト大統領、英国のチャーチル首相、ソ連のスターリン首相が出席。ソ連の対日参戦や欧州での独ソ間の戦線に次ぐ第二戦線(仏北部への上陸作戦であるオーバーロード作戦)の形成などで合意したが、とりわけ過熱したのは以前から取り沙汰されていた第二戦線問題だった。