「けん玉歌手」三山ひろしが突き詰める歌の道

郷土愛あふれる演歌歌手の三山ひろし。手に持つ愛用のけん玉には高知県のイメージキャラクター「くろしおくん」が描かれている=大阪市北区(彦野公太朗撮影)
郷土愛あふれる演歌歌手の三山ひろし。手に持つ愛用のけん玉には高知県のイメージキャラクター「くろしおくん」が描かれている=大阪市北区(彦野公太朗撮影)

「いごっそう」。頑固で一本気な男性を意味する土佐の言葉だが、高知県出身の演歌歌手、三山ひろし(41)は自身をそう表現する。NHK紅白歌合戦では歌と特技のけん玉のコラボ企画で会場を沸かせる〝けん玉歌手〟としても知られるが、それも遊びではなく「全ては歌に通じる」と大真面目。来年デビュー15周年を迎える演歌界のいごっそうは、歌も趣味も「中途半端はない」と真っすぐな目で言い切る。

聴く人に安心感と活力を与える「ビタミンボイス」がキャッチフレーズ。柔和な童顔に朗らかさがにじむが、28歳でデビューした遅咲きの苦労人でもある。

祖母の影響で春日八郎や三橋美智也の歌をよく聴き、歌手に憧れた。だが、高校2年で初挑戦した「NHKのど自慢」の結果は、吉幾三の「雪國」を歌って鐘2つ。「これでは歌手にはなれない」と思い、夢を諦め歌を捨てた。

母子家庭で、高校卒業後は家計を支えるために地元のガソリンスタンドに就職したが、歌への未練を見抜いたのが祖母だった。「歌手になりなさい。見込みがあると思うき、頑張りなさい」。そう励まし、詩吟教室に通わせたという。

転機は祖母の勧めで再挑戦した平成16年の「のど自慢」高知県土佐清水市大会。チャンピオンとなったことで自信を付け、25歳で上京。3年後に夢をつかんだ。

「歌手いうたってどっさりおるき、紅白に出るような歌手にならんかったらいかんぞね」

祖母の期待に応えられたのは6年後。7年連続出場と、紅白の常連となった今も「祖母のおかげで僕がある」と感謝を忘れない。

新歌舞伎座の特別公演の舞台で熱唱する三山ひろし=平成30年、大阪市天王寺区(江川誠志氏撮影)
新歌舞伎座の特別公演の舞台で熱唱する三山ひろし=平成30年、大阪市天王寺区(江川誠志氏撮影)

けん玉の極意は3つの「あ」

三山といえば、紅白で人気の企画「けん玉チャレンジ」の主役でもある。昨年も生放送中に126人連続でけん玉を成功させ、ギネス世界記録を更新した。

「けん玉は単なる伝承遊びではなくてスポーツ。成功するためには努力や鍛錬が必要で…」と熱い。約10年前にファンを楽しませようと始めたのを機にのめり込み、現在は4段の腕前と指導員の資格を持つ。

一見すると歌とは関係なさそうだが、けん玉の極意「慌てず、焦らず、諦めず」は「歌の世界にも通じる」と三山。「慌てても焦ってもいい歌は歌えない。諦めずに失敗の原因を分析することで、歌をさまざまな角度から見る力も養える」と相乗効果を強調する。

趣味の全てから養分

他にもカブトムシの飼育や裁縫など多趣味で有名だが、昨年はテレビの企画で落語に挑戦し、はまった。高座でうまく言葉が出ない悪夢に連日うなされ、師匠の立川志の春から「落語家が見る夢だから見なくてよろしい」とあきれられるほど熱中したという。

落語では役柄を演じ分ける表現力を学んだ。「本道は『歌』。でも脇道にそれたときに得るものも何か歌に使えると思って、突き詰めて研究しています」。道すがら得る全てを養分にしながら、三山ひろしという木は枝をはり、太く大きく成長を続けている。

伸びのある温かい歌声が三山ひろしの魅力=平成30年、大阪市天王寺区(江川誠志氏撮影)
伸びのある温かい歌声が三山ひろしの魅力=平成30年、大阪市天王寺区(江川誠志氏撮影)

大阪・新歌舞伎座で5月20日から特別公演

三山ひろしが座長を務める3年ぶりの特別公演が20~31日、大阪市天王寺区の新歌舞伎座で開かれる。三山の芝居と歌を堪能できる2部制の公演だ。

第1部は芝居「いごっそう纏(まとい) 天までとどけ‼」(池田政之作・演出)。舞台は江戸時代。大阪の腕のいい火消しの佐吉(三山)に土佐藩から指導役に、とお呼びがかかる。土佐藩では実母のおりう(三林京子)がお家騒動に巻き込まれていて-。三山が指導した土佐の言葉も見どころ。第2部の「みやまつり2022~名曲100年!歌絵巻!~」では、100年前に誕生した童謡唱歌から令和の名曲まで、時代を彩った名曲を熱唱する。

問い合わせは新歌舞伎座(06・7730・2121)まで。(田中佐和)

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