米、ASEAN支援に190億円 中国念頭に連携

【ワシントン=大内清】米国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議が12日、ワシントンで2日間の日程で開幕した。バイデン政権はASEAN各国の沿岸警備能力増強に向けた協力や再生可能エネルギー分野への投資などを盛り込んだ総額約1億5千万ドル(約192億円)相当の支援を行うと発表した。

発表によると、東南アジアやオセアニアでの違法漁業や強制労働による漁業の取り締まりや、関係国の沿岸警備隊の訓練、船舶などの装備提供を含む新たな「海洋イニシアチブ」に6千万ドルを拠出する。米政権高官は同日、域内での中国の影響力拡大を念頭に、これらの支援は「自由で開かれたインド太平洋を促進するもの」だと語った。

中国が覇権的行動を強める南シナ海などでは、中国の漁船団での船員虐待や強制労働といった人権侵害が多数確認されている。バイデン政権は、東南アジア諸国に対して「米国か中国かの二者択一は迫らない」(同高官)との方針を掲げつつ、海洋安全保障にもつながる一連の支援を強化することで、地域への関与を深めていく考えだ。

また、再生可能エネルギー分野に4千万ドルの投資を表明したほか、域内の陸海空の交通インフラ整備や、観光資源ともなる自然環境の保護促進に向けた支援を約束した。

同高官はこれらの取り組みについて、バイデン大統領が今月下旬の訪日に合わせて発表する可能性がある「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)構想と重なり合うとの認識を示し、ASEANをIPEFに取り込むことに意欲を示した。

バイデン政権はさらに、新型コロナウイルス対策などとして1千万ドルの支援を新たに約束したほか、米疾病対策センター(CDC)の地域事務所をベトナムの首都ハノイに開設し、域内各国と感染症の監視態勢構築を進めるとしている。

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