罰則付き証人喚問も説明かみ合わず…熱海盛り土百条委

盛り土の土地の現旧所有者らへの証人喚問を行った熱海市議会百条委員会=12日、同市議会議場(田中万紀撮影)
盛り土の土地の現旧所有者らへの証人喚問を行った熱海市議会百条委員会=12日、同市議会議場(田中万紀撮影)

12日の静岡県熱海市議会調査特別委員会(百条委員会)は、昨年7月の大規模土石流の被害を甚大化させたとされる盛り土の現旧土地所有者が証人喚問に登場するヤマ場を迎えた。だが、それぞれが自己弁護に終始し、誰が危険な盛り土を主導したのか、明確にはならなかった。委員側の追及の甘さも目立った。

「いちいちチェックせず」

「重要事項説明書を見ていない。不動産屋任せで、いちいちチェックしていない」。土地を平成23年に取得した際の盛り土の認識の有無を問われた現所有者は、証人としてこう言い切った。この売買の際の重要事項説明書には「成形して硬化剤で固めることを売り主が買い主に確約し、工事終了後、完了届を提出する」と記されていた。

現所有者の代理人の河合弘之弁護士は、記者団に「説明書には『盛り土』という言葉は存在しないし、危険性の示唆もない」と発言。仮に現所有者が読み込んだとしても認識できなかったとの見解を示した。

だが、続いて証言した旧所有者の会社の元幹部は「(現所有者側の)仲介人に(盛り土の)土地に対する内容を説明している」と断言した。

食い違い

造成指示をめぐっても食い違いがあらわになった。

崩落起点に土砂を運んだ業者の幹部は、違法な盛り土造成への関与を否定した上で、土砂搬入についてこう証言した。「『残土を入れてくれ』と旧所有者に頼まれた。『報告もしてほしい』との指示があり、相談しながら埋めた」

これに対し旧所有者は「(この業者に)土地を貸している人間。『こうすればいい』といえる立場にはない」と指示を全面否定。土地を貸しているだけで盛り土を主導していないという従来の主張を展開した。

業を煮やした委員側に、旧所有者が関係者に指示したともとれる音声テープの〝証拠〟を持ち出されても「私の声とも思われる」とはぐらかし、「相談があればアドバイスする。(それを)指示しているというのは言葉のあやだ」と強弁する場面もあった。

逆に行政批判

旧所有者は、行政批判すらしてみせた。熱海市への盛り土届け出書類には空欄があった不備が明らかになっているが、「役所が書けといえば書く。行政の指導通りに行っており、なぜ市が空欄で受け取ったのか、逆に聞きたい」と述べた。

「私は関与していない」などと責任の押し付け合いが目立ち、真相究明にはほど遠い質疑に終わった百条委。「危険性の予見」などについて明確にただす質問もみられなかった。

虚偽証言には罰則の可能性もある百条委だが、稲村千尋委員長は終了後、記者団に「誰が真実を述べ、誰の発言が噓かを追及する委員会ではない」と限界を認めた上で、真相究明に期待を寄せる被災者を念頭に、こう漏らした。

「申し訳ないが、本当に真実が分からない。そういう百条委になってしまった…」

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