「論文を発表した当時、誰からも電話はかかってこなかった。でも、メッセンジャーRNA(mRNA)は素晴らしい治療法になると確信していた」
4月15日、東京都内。社会に大きく貢献した科学者に贈られる「日本国際賞」の受賞者記者会見で、米ペンシルベニア大特任教授、カタリン・カリコは晴れやかに語った。彼女は、新型コロナウイルス禍で初めて実用化され、瞬(またた)く間に世界の主流となったmRNAワクチンの生みの親だ。
ウイルスが感染の足掛かりとするタンパク質の遺伝情報を伝えるmRNAを投与し、体内でウイルスのタンパク質を作成。抗体が作られ、免疫を獲得する。他種のワクチンに比べ、人工合成が簡単で、短期間での大量生産が可能。発症予防効果の高さも証明された。