鑑賞眼

2つの「ロミオとジュリエット」 GW、バレエの競演

4月30日に主演したロミオ役の秋元康臣と、ジュリエット役の足立真里亜©Shoko Matsuhashi
4月30日に主演したロミオ役の秋元康臣と、ジュリエット役の足立真里亜©Shoko Matsuhashi

今年のゴールデンウイーク、東京のバレエ界はさながら〝プロコフィエフ祭り〟の様相だった。新国立バレエ団が「シンデレラ」、東京バレエ団と松山バレエ団がそれぞれ「ロミオとジュリエット」と、このウクライナ生まれの作曲家のバレエを上演。多幸感いっぱいのシンデレラに、シェークスピアの戯曲に基づく2つの「ロミオ-」競演も面白く、各会場はほぼ満席だった。

東京バレエ団はクランコ版初演

東京バレエ団は、独シュツットガルト・バレエ団を育てた物語バレエの巨匠、ジョン・クランコ(1927~73年)振り付けの「ロミオ-」を、日本のバレエ団としては初めて上演した。

せりふはなくとも、メロディーに合わせ一気に駆け抜けた若い男女の情熱が、あふれ出るような作品。プリンシパル(最高位ダンサー)の秋元康臣は、肩書にふさわしい高度な技術の持ち主だが、今作ではむしろ踊っていないときの、演技のていねいさが心に残った。足立真里亜演じるジュリエットに出会った舞踏会の場面、一歩一歩、吸い寄せられるように近づく歩みに、爪先に、ドラマを感じた。そしてジュリエットを全身でいとおしむような丁寧なサポートも、雄弁に思いを表現していた。

抜擢(ばってき)に応えた足立の初々しさと可憐さは、生まれながらジュリエットのよう。粗削りな部分も、若さの勢いに感じられ、短い人生を駆け抜ける少女の輝きを放った。マキューシオ役の宮川新大のキレッキレの動きと小憎らしさ漂う演技、パリス役の大塚卓の美しさも印象に残った。

そして作品第二の主役である、装置(ユルゲン・ローゼ)の素晴らしさ。全幕を通し、舞台後方に設営された二重アーチが、ときに橋になり、バルコニーになり、地下の霊廟(れいびょう)になる見事な演出は、世界初演から60年を経ても、色あせない。

橋のような装置はもう一つの主役。時にはバルコニーにも、霊廟にもなる ©Shoko Matsuhashi
橋のような装置はもう一つの主役。時にはバルコニーにも、霊廟にもなる ©Shoko Matsuhashi

過去、本家シュツットガルト・バレエ団の同作来日公演もあったが、遜色ない舞台だった。ただ3ペアでたったの3回公演では惜しく、もっと回数を増やしてほしい。4月29~5月1日、上野の東京文化会館。

なお今公演時期、東京文化会館を中心にイベント「上野の森バレエホリデイ」が開かれ、パブリック・ビューイングでのバレエ映像放映や、無料の公開バレエレッスンなどを楽しむ親子連れが大勢いた。文化庁の助成期間が終了し、「今回が最後」だそうだが、バレエの催しとして定着し、裾野を広げる効果があっただけに、何とか継続してほしい。

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