交通違反をした高齢ドライバーに免許更新時の運転技能検査を義務付ける改正道路交通法の施行を5月13日に控え、電動車いすベンチャーのWHILL(ウィル、東京都品川区)は12日、電動シニアカーの普及・啓発イベントを東京都内で開いた。電動シニアカー市場では大手自動車メーカーも商品を展開しており、高齢者の外出を支える新たな〝足〟として浸透しつつある。
4輪タイプで安定走行
イベントでは、タレントの関根勤さん、麻里さん親子が電動シニアカーを体験。「レバーを放すだけで止まるので安全」(勤さん)、「小回りが効くので買い物にも使えそう」(麻里さん)などと感想を述べあった。
ウィルの池田朋宏執行役員は「クルマから離れた高齢者が免許返納後も外出を楽しめる文化をつくりたい」と話した。
またウィルはイベントに先立ち12日、歩道も走行できるハンドル付きの新型シニアカー「モデルS」を発表した。最高時速は6㌔で、4輪タイプのため安定走行できる。今秋に市場へ投入する。
ウィルは、平成26年に電動車いすを発売。独自構造のタイヤやホイールにより、最大5㌢の段差を難なく乗り越えられるのが特徴だ。当初は福祉用具店での販売やレンタルが中心だったが、令和元年から全国の自動車ディーラー約70社を販売代理店に指定。試乗会を開いているほか、高齢ドライバーや家族などからの相談にも応じている。
一方、自動車大手スズキは昭和49年から電動シニアカーを販売して普及を牽引。トヨタ自動車系のトヨタ車体も、ハンドル付きの電動カートを投入している。
法改正で免許返納増加も
13日施行の改正道路交通法では、75歳以上のドライバーが一定の違反行為をした場合、免許更新時に運転技能検査の受検が義務付けられる。もし不合格になれば、免許の更新ができないため、免許返納の増加が見込まれている。
ただ、公共交通機関が行き届かない地域では、高齢者が買い物や通院のため自動車を日常的に運転しているのが実情だ。電動シニアカーは、運転免許を返納した後の代替交通手段としての役割が高まっている。
警察庁によると、運転免許の自主返納者は、東京・東池袋で高齢者による暴走事故が起きた令和元年に約60万人に達した。近年は、新型コロナウイルスの感染防止で高齢者が外出を控えた影響から、返納者は減少。3年は約55万人にとどまった。(松村信仁)