【ロンドン=板東和正】北欧フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相は12日、同国の北大西洋条約機構(NATO)加盟について「速やかに申請しなければならない」との共同声明を発表した。同国首脳がNATO加盟に関する態度を公式に示すのは初めて。ウクライナを侵略したロシアの脅威が高まる中、伝統的な軍事的中立路線からの転換を図る。
最終決定にはフィンランド国内の手続きが必要だが、国家元首や行政トップが態度を明示したことで、NATO加盟申請の方針はほぼ固まった。ロイター通信などによると、同様に中立政策をとってきた北欧のスウェーデン政府も、加盟を申請する方針を16日にも決める見通しだ。
共同声明は「NATOへの加盟によりフィンランドの安全保障は強化される。フィンランドはNATOの一員として、同盟全体を強化することになる」と強調し、申請の最終決定に向けた国内手続きが「今後数日以内に迅速に取られることを望む」と表明した。
NATO加盟には全加盟国30カ国が全会一致で承認した上で、各加盟国内の批准手続きが必要だ。フィンランドとスウェーデンはNATOが6月末にマドリードで開催する首脳会議までに申請するとみられるが、正式加盟には1年近くを要するとの見方もある。
ロシアがフィンランドのNATO加盟に反発するのは必至。正式加盟まではNATOによる集団防衛義務が完全には適用されないため、フィンランドは円滑な加盟手続きをNATO側に要求する意向だ。
フィンランドとスウェーデンは11日、英国と相互安全保障に関する共同文書に署名した。有事の際に要請すれば相互に軍事支援する内容。NATOの集団防衛が適用されるまでの間、ロシアによる北欧2カ国への攻撃などを牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。