海底のレクイエム

トラック諸島の艦上偵察機「彩雲」

「彩雲」(さいうん)は中島飛行機が開発した艦上偵察機で、空母に搭載しての運用を目的とした機体として、戦闘機並みの高速力を発揮した。昭和19(1944)年より実戦配備され、偵察行動中に追撃されたアメリカ海軍の艦上戦闘機・グラマンF6Fヘルキャットを振り切り、同機より打電された電文「我に追いつくグラマン無し」は有名である。

上から見た「彩雲」の機体。艦上機らしく操縦席が主翼に対してかなり前に位置しており、胴体や主翼は原型のまま残されている(戸村裕行撮影、2012年12月)
上から見た「彩雲」の機体。艦上機らしく操縦席が主翼に対してかなり前に位置しており、胴体や主翼は原型のまま残されている(戸村裕行撮影、2012年12月)

「海底のレクイエム」第1回でミクロネシア連邦チューク州の海底に眠る艦上攻撃機「天山」を紹介させていただいたが、実はチュークには「天山」によく似たシルエットを持つ航空機「彩雲」が眠っている。

場所はウエノ島(春島)の北約1 キロメートル、水深約16メートルに眠る機体は、エンジンやコックピット内の計器類が取り払われていること、翼や胴体に一部が散乱していることから、この場所に廃棄されたのではないかと確認されている。

エンジンやプロペラなどがないとはいえ、ほぼ原形をとどめた「彩雲」は、コックピット内部や主翼上面等の貴重な情報を伝えている。

斜め前から見た「彩雲」。アンテナ支柱と長い風防が印象的だ(戸村裕行撮影)
斜め前から見た「彩雲」。アンテナ支柱と長い風防が印象的だ(戸村裕行撮影)
操縦席から風防越しに外を見る。操縦席内部の計器板やエンジンはない(戸村裕行撮影)
操縦席から風防越しに外を見る。操縦席内部の計器板やエンジンはない(戸村裕行撮影)
右主翼の上面。写真左側の外板が外れている部分が3番燃料タンクで、落下式燃料タンクの増槽を取り付けた状態で約5300キロメートルの航続力を誇っていた(戸村裕行撮影)
右主翼の上面。写真左側の外板が外れている部分が3番燃料タンクで、落下式燃料タンクの増槽を取り付けた状態で約5300キロメートルの航続力を誇っていた(戸村裕行撮影)
破損しているが水平尾翼ならびに垂直尾翼が残されている「彩雲」の後部(戸村裕行撮影)
破損しているが水平尾翼ならびに垂直尾翼が残されている「彩雲」の後部(戸村裕行撮影)

(取材協力 ダイビングサービス「トレジャーズ」)

■地図

水中写真家・戸村裕行

1982年、埼玉県生まれ。海底に眠る過去の大戦に起因する艦船や航空機などの撮影をライフワークとし、ミリタリー総合誌月刊『丸』にて連載を担当。それらを題材にした写真展「群青の追憶」を靖國神社遊就館を筆頭に日本各地で開催。主な著書に『蒼海の碑銘』。講演、執筆多数。

雑誌「丸」
昭和23年創刊、平成30年に70周年迎えた日本の代表的軍事雑誌。旧陸海軍の軍 艦、軍用機から各国の最新軍事情報、自衛隊、各種兵器のメカニズムなど幅広 い話題を扱う。発行元の潮書房光人新社は29年から産経新聞グループとなった 。毎月25日発売。

●月刊「丸」のホームページ


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