ドイツ首相、支持急落 ウクライナ対応で迷走

ドイツのショルツ首相(ロイター)
ドイツのショルツ首相(ロイター)

【ベルリン=三井美奈】ドイツのショルツ首相がウクライナ侵攻への対応で迷走し、支持率が急落している。8日の地方選では首相の中道左派与党、社会民主党(SPD)がライバルの保守系野党、キリスト教民主同盟(CDU)に大敗した。15日には国内経済の最有力州で議会選を控えており、連立政権内で緊張が高まっている。

最近の世論調査で「首相に満足」とする回答は39%。3週間で12ポイントも下落した。原因は、ウクライナへの兵器供与をめぐる煮え切らない態度にある。

ショルツ氏は2月末、「紛争地に兵器を送らない」という戦後ドイツの原則を変え、「自衛のため」として殺傷兵器の支援を決めた。その後、米国や東欧が軍用ヘリコプターや戦車など大型兵器の供与に乗り出すと、国内外の要求に押される形で4月末、「ゲパルト自走対空砲50台を供与する」と決めた。すると、ウクライナ側が「ゲパルトは40年前の兵器ではないか」と反応し、戦車と歩兵戦闘車計180台以上の提供を改めて求めた。ショルツ氏は先週、新型自走砲7台の追加供与を決めたが、ポーランドは戦車200台以上を供与する方針とされ、ドイツの慎重ぶりをかえって際立たせた。

ショルツ氏は8日、第二次大戦終結記念日のテレビ演説で、大型兵器の供与を「注意深く続ける」と表明した。しかし、ウクライナのメルニク駐独大使は「具体的な支援策を示してほしかった」と失望感を示した。

ウクライナがショルツ政権に不信の目を向けるのは、SPDとロシアとの固い絆にも原因がある。

東西冷戦中の1970年代、SPDのブラント西独首相はソ連との対話によるデタント(緊張緩和)を主導し、ソ連の天然ガスパイプライン建設を進めた。98年に就任したSPDのシュレーダー独首相はプーチン露大統領と親交が深く、退任後はロシア国営石油大手の会長に就任。ロシアのロビー活動に協力してきた。ドイツがガスや石油をロシア産に依存するために、欧州連合(EU)は対露制裁でエネルギー禁輸を即時発動するのが難しくなった。

SPDのシュタインマイヤー現大統領は先月、東欧首脳とともに首都キーウ(キエフ)訪問を計画したが、メルケル政権の外相だった際、親露外交を進めたことから、ウクライナ側に拒否された。ショルツ氏が「これが支援国に対する態度か」と不快感を示すと、CDUのメルツ党首がすかさずキーウを訪問し、SPDの迷走を浮き立たせた。

ショルツ政権のもたつきで、CDUはがぜん勢いづいている。8日、北部シュレスウィヒ・ホルシュタイン州で行われた議会選でCDUは大勝。SPDはCDUだけでなく、緑の党にも敗れた。15日に州議会選が行われる西部ノルトライン・ウェストファーレン州は、人口、経済規模とも国内最大の重要州で、SPDが再び大敗すれば、国政への衝撃は計り知れない。ショルツ氏は首相就任から半年足らずで、深刻な危機に直面している。

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