野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志

球界全体で審判を盛り立てる

4月24日のオリックス戦で白井球審(奥左)に詰め寄られたロッテの佐々木朗=京セラ
4月24日のオリックス戦で白井球審(奥左)に詰め寄られたロッテの佐々木朗=京セラ

野球の試合で審判が目立ってしまうのはまずい。4月24日に京セラドーム大阪で行われたオリックス-ロッテ。ストライク、ボールの判定に苦笑いを浮かべたロッテの佐々木朗希投手に白井一行球審が詰め寄る一幕があった。同10日の登板で完全試合を達成し、大きな注目を集めていたこともあり、球審の行動に賛否両論が飛び交った。

僕も映像で佐々木朗の様子を確かめたが、何ということはない普通の態度だった。投手の表情に過敏に反応する前に、判定の正確さを省みなければならない。自分が目立つことなくゲームを終わらせることができるのが優秀な審判だろう。

1982年の中日と西武の日本シリーズ第5戦。三回2死二塁の先制機で、中日の平野謙の打球は一塁線を抜けるかと思われたが、一塁後方にいた塁審の足に当たり、不運にも内野にとどまった。走者の僕が三塁でタッチアウト。僕らにとっては2連敗のあと2連勝して迎えた5戦目。先制点を挙げていたら勢いに乗ったはずの重要な場面だったが、あのプレーで流れが変わってしまい、日本一に届かなかったのは残念だった。

正直言うと、あの打球を避けられなかったら審判として失格じゃないのかと思った。選手は必死にやっているのだから審判がゲームを曲げてしまってはいけない。今も昔も審判の技術向上は大きな課題だ。

今は際どいプレーにはリプレー映像による検証を要求できるリクエスト制度がある。検証の結果、約3分の1は判定が覆る。しこりを残さずスムーズに試合を進行できる点ではよいが、審判に敬意が払われにくくなっているようにも思う。

審判は正確な判定をしても、それが当たり前だとみられ、精神的に大変ハードな仕事だ。優秀な審判は球界全体でたたえて、選手たちがリスペクトする機会を作ってあげられないだろうか。

最も優秀な審判を選ぶ制度を作り、シーズン終了後に表彰してはどうだろう。リプレー検証での判定の〝正解率〟のほか、野球担当記者の見立てなどを総合して表彰するというものだ。審判員の向上心や誇りにつながると思う。(野球評論家)

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