from和歌山

「紀州鉄道、心の中に」

民家の間を走る紀州鉄道の列車。鉄路を未来に残す努力は続いている=和歌山県御坊市
民家の間を走る紀州鉄道の列車。鉄路を未来に残す努力は続いている=和歌山県御坊市

カンカンカン…という踏切の警告音に続き、クリームと緑の2色に塗られたディーゼル車が民家の間をゆっくりと走り去った。「日本一短い鉄道」として知られる和歌山県御坊市の紀州鉄道。取材を通し、「この路線は将来も走り続けていく」と感じている。

JR紀勢線御坊駅に接続する紀州鉄道は現在、御坊-西御坊間の2・7キロを約8分で走る。平成元年には末端の0・7キロ区間が廃止された。もともと鉄道省紀勢西線(当時)が御坊まで延びる際、駅の設置場所が市街地から離れていたため、地元有志らが協力して前身の鉄道会社を昭和3年に設立したことが起源だ。

90年の歳月を超えてなお、地域の足は地道に走り続ける。御坊を出た列車は左方向へ曲がり、田園の間を抜けて昭和54年新設の学門に。その後、駅員がいる唯一の駅・紀伊御坊などを経て民家の間をすり抜けるようにして西御坊へ着く。

この学門駅は近くの県立日高高校などの要望で設置された経緯がある。そんな地域の思いに応えるように、車内で駄菓子を販売する「駄菓子列車」の運行などの取り組みを続けてきた。

そうして今月4日には「キテツフェスタ2022」と銘打った地域活性化イベントを開いた。

コロナ禍に伴い運行できなかった駄菓子列車も、約2年ぶりに運転。廃線跡周辺を歩くツアーには「40人ほどの参加者がありました」と担当者は話す。紀伊御坊ではボランティアスタッフとして日高高校などの学生らが参加。輪投げやグッズ販売といった催しも開かれ、親子連れを中心としてにぎわったという。

沿線の子供たちが成長する中、紀州鉄道に愛着を持ってもらうことで将来の通学などでの利用につなげていく。「人生のどこかで、紀州鉄道が子供たちの心の中に残ってもらえれば」。担当者は思いを語った。

«初乗りを試みる人多く来る車も来る車も全部満員である»

昭和6年、運行開始日の様子を当時の地元紙はそう記す。地域に必要とされて誕生し、未来に残す努力は今も続く。(藤崎真生)

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