顧客の暮らし支える電器店の姿 絵本に

絵本「そらをとんだでんきやさん」(ⓒ山形パナソニック)
絵本「そらをとんだでんきやさん」(ⓒ山形パナソニック)

街の電器店の役割を広く知ってもらおうと、山形市内に拠点を置く山形パナソニックと東北芸術工科大が協同し、絵本「そらをとんだでんきやさん」を刊行した。職業の知識と職を選ぶ力を育む「職育」の教材としても役立ててくれればと県内の小学校や幼稚園、保育園などに贈呈。擬人化した電器店主の犬が活躍するほほえましいストーリーに共感が広がっている。

困りごとを次々解決

製品の販売だけでなく、顧客の暮らしも支える電器店の存在を、もっと広く知ってもらいたい-。そんな思いを山形パナソニックの原田留美さん(55)が東北芸術工科大に相談したことで、絵本の企画が生まれた。

絵本「そらをとんだでんきやさん」の一部分(ⓒ山形パナソニック)
絵本「そらをとんだでんきやさん」の一部分(ⓒ山形パナソニック)

絵本は、動物が住む村の電器店主で犬の「ファン」が、自作の飛行機で空を飛んだものの、トラブルで知らない村に不時着したことから生まれる物語。寒さに震え身を寄せ合っていた動物たちを見て、ファンはストーブを作ってあげる。「ニンジンがすぐに傷んでしまう」と困っていたウサギに冷蔵庫を作り、「旅先の景色を忘れてしまう」というニワトリの夫婦にはカメラを提供…。ファンは村の動物たちの困りごとを見聞きすると、電器店で培った知識や技術で次々解決していくのだ。一方で、元の村ではファンがいなくなって、みんなが困ってしまうという話だ。

絵本「そらをとんだでんきやさん」を手掛けた富永裕音さん(右から3人目)と井上諄子さん(同5人目)ら=山形市(東北芸術工科大提供)
絵本「そらをとんだでんきやさん」を手掛けた富永裕音さん(右から3人目)と井上諄子さん(同5人目)ら=山形市(東北芸術工科大提供)

県内外から問い合わせ

絵本の制作は完成当時、文芸学科2年だった富永裕音(ゆうと)さん(20)がストーリーを、美術科洋画コース4年だった井上諄子(あつこ)さん(22)が絵を担当した。

富永さんは山形市と寒河江市の電器店を訪れ、仕事の楽しさや苦労を取材。「価格の安さや機能の新しさではなく、顧客に合った製品を提供していることに気づいた」といい、絵本のストーリーに反映させた。

幼い頃から実家が地元の電器店の世話になってきたという井上さんは「電器屋さんの大切な役割を絵本で分かりやすく伝えられていたら、うれしい」と話す。

家電量販店の進出や後継者不足で、個人経営が中心の電器店は減少傾向が続く。原田さんは「絵本を通して電器店の仕事に少しでも興味を持ってもらえたら」と話す。

絵本は当初600冊を用意したが、県外からも問い合わせがあるなど反響は大きく、山形パナソニックは増刷も検討しているという。(柏崎幸三)

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