4月下旬、ウクライナ東部の要衝マリウポリをロシア軍が「掌握」したと宣言したのに併せて、プーチン大統領は「ハエも飛び立つことができないように周辺を封鎖せよ」とショイグ国防相に命じた。これを聞いて、およそ血の通った人間が発する言葉ではないと戦慄を覚えた。
マリウポリ市内の製鉄所にはウクライナ軍兵士が籠城しているだけでなく、宣言した時点でも巨大な地下空間に多数の民間人が避難して命をつないでいた。一帯の封鎖とは表向き、ロシア兵が突入して痛手を負うのを回避する配慮だが、真のねらいは避難民の脱出や物資の搬入を困難にする兵糧攻めを意味する。
民間人の命など虫ほどでもない―という冷酷な思考を、なぜ公開映像の中でわざわざ示すのだろうか。