360度視聴可能 「自由視点」をスマホで ベンチャー、映像圧縮技術など独自開発

自由視点映像は角度を変えながら映像を確認できるため、介護サービスの教材などにも利用可能だ(マスタービジョンズ提供)
自由視点映像は角度を変えながら映像を確認できるため、介護サービスの教材などにも利用可能だ(マスタービジョンズ提供)

あらゆる視点から映像を視聴できる「自由視点映像」に注目が集まっている。好みの角度から映像を見ることで高い没入感を体験できるからだ。スポーツ中継で採用が進むが、被写体を多数のカメラで取り囲んで撮影する必要があるなど、コスト面でのハードルは高い。キヤノンやソニーといった大手メーカーなどが注力する中、ベンチャー企業のMasterVisions(マスタービジョンズ、東京都品川区)が配信しやすい自由視点映像技術を開発。安価なサービスとして提供していく。

同社が独自に開発した自由視点映像は携帯電話回線を使った配信が可能だ。10~60台と多数のカメラを使用する点は大手メーカーなどと変わらないが、大手の場合、撮影した動画の容量が大きくなるため携帯回線での配信が困難という。そこで同社は携帯回線に適した映像圧縮技術を独自開発した。携帯回線を使えるため、視聴者はスマートフォンやタブレットなどのウェブブラウザーで動画を見ながら、指で拡大したり見たい角度に回転させたりすることができる。

これまでプロ野球やサッカーの試合といったスポーツや音楽ライブなどエンターテインメント分野を中心に技術供与してきた。医療や介護の教材コンテンツの作成時に使われたこともあり、技術供与の実績は数十件に上るという。

3月には、KDDIなどと共同でヨガ教室の講師を自由視点映像で撮影して配信し、離れた場所からリアルタイムで参加できる遠隔教室の実証実験にも取り組むなど、広がりを見せている。

空手の演舞を自由視点映像で撮影するため多くのカメラを使用した(MasterVisions提供)
空手の演舞を自由視点映像で撮影するため多くのカメラを使用した(MasterVisions提供)

映像加工技術だけでなく、カメラも独自に機能を絞り込んで小型軽量化した。専用カメラでの撮影、パソコンでの編集・加工、配信を一括サービスとして提供できる仕組みも整えた。価格は大手の同種のサービスと比べて10分の1以下に抑えたという。沢山雄一最高経営責任者(CEO)は「自由視点映像は機材が高価で操作が煩雑だった。それを誰でも使いやすく、安価にした」と語る。

自由視点映像を使った介護の教材をつくるため被写体を多数のカメラで撮影する(MasterVisions提供)
自由視点映像を使った介護の教材をつくるため被写体を多数のカメラで撮影する(MasterVisions提供)

今後は、携帯大手と連携して高速大容量の第5世代(5G)移動通信システム向けのサービスとしてスマホ利用者に配信したり、自由視点映像を誰もが手軽に撮影できる場所を増やしたりすることなどを検討する。さらに、ITシステム開発や販売を手掛ける電巧社(同港区)と共同で、自由視点映像を商品PRなどに使いたい企業を対象にした法人向けサービスも提供する方針だ。

同社の中嶋乃武也社長は「顧客企業に合わせて映像視聴者向けの課金の仕組みなども作って提供していきたい」と話している。(大坪玲央)

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