「中国は友人」比次期政権、親中継続へ

選挙集会に臨んだマルコス氏(左)と、ドゥテルテ大統領の長女サラ氏=7日、フィリピン・マニラ首都圏(AP=共同)
選挙集会に臨んだマルコス氏(左)と、ドゥテルテ大統領の長女サラ氏=7日、フィリピン・マニラ首都圏(AP=共同)

9日投開票のフィリピン大統領選で勝利したフェルディナンド・マルコス・ジュニア元上院議員(64)は、ドゥテルテ現大統領が推進した親中姿勢を継続する見通しだ。南シナ海問題でも国際的な圧力より、中国との対話で解決する姿勢を示した。マルコス次期政権が親中姿勢を強めればインド太平洋地域の安定に影響が出かねないだけに、外交政策が注目される。

「中国は友人だ」。マルコス氏は選挙前の地元メディアのインタビューでこう明言した。南シナ海問題をめぐっては中国の権益を否定した仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の裁定を棚上げし、中国と2国間交渉で解決する意向を表明。ドゥテルテ政権の親中姿勢も評価し、中国との領土問題に米国が関与することは「災いのもとだ」とも述べた。

ドゥテルテ氏は2016年6月に大統領に就任すると、仲裁裁判所裁定を「ただの紙切れに過ぎない」と断言し、中国接近を進めた。国内では中国支援のプロジェクトが進む。

首都マニラ中心部では今年4月、中国の全面支援で旧市街と中華街をつなぐ「ビノンド-イントラムロス橋」が完成。開通式典に出席したドゥテルテ氏は、中国を「わが国のインフラを強化するためのパートナーだ」と持ち上げ、退任が迫っても親中姿勢が変わらないことを印象付けた。

しかし、融和姿勢にもかかわらず、中国の南シナ海の実効支配は止まらなかった。昨年3月には中比が領有権を主張するスプラトリー(中国名・南沙)諸島の周辺海域で220隻以上の中国船が確認され、両国間の緊張が高まった。

こうした状況を受け、フィリピンでは経済面での中国との関係を重く見つつも、安全保障面で同盟国である米国との連携を深めたいとの空気が強まっている。3~4月にかけ、米国との定例の合同軍事演習「バリカタン」を過去最大規模で実施したのもその流れを受けたものだ。

マルコス氏自身は「強い政治的信念はなく、考えが良く分からないタイプ」(外交筋)との評価で、ドゥテルテ政権下で亀裂が入った米比関係の修復に乗り出すのかなど不明な点が多い。

米国では父のマルコス元大統領時代の人権弾圧をめぐって集団訴訟が起き、約24億ドル(約3000億円)の賠償命令が出たが、マルコス一族は支払っていないという問題もある。フィリピン政治評論家のアンドレア・ウォン氏は過去の人権問題などを踏まえた上で、「バイデン米大統領がどのように〝マルコス復活〟に反応するか注目される」と話している。(マニラ 森浩)

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