経済面で国民守る「重要な一歩」 安保法成立

経済安全保障推進法の成立は、中国の台頭やロシアによるウクライナ侵攻で経済安保の重要性が浮き彫りになる中、「国民の命と暮らしを経済面から守り抜ける国になるための重要な一歩」(小林鷹之経済安保担当相)となった。ただ、運用の明確化や機密情報の取り扱いなど積み残した課題も多い。政府は断続的な法改正も視野に、経済安保政策を充実させていく方針だ。

経済安保の重要性を物語る出来事は世界中で起きている。昨年5月には米国の石油パイプライン施設がロシア系ハッカー集団によるサイバー攻撃を受けて操業停止を余儀なくされた。

推進法では、政府が電力などの基幹インフラ事業者が使う重要設備の導入や維持管理の委託先について、外部からの妨害行為の危険性がないか事前に審査することを義務化する。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を支えるデータの重要性が増す中、中国では国家によるデータアクセスが法律で認められている。外部からの不正窃取からデータを保護することも、今回の法整備の狙いの一つだ。

推進法の成立により、軍事転用が可能な機微な特許技術を非公開にする制度も実現した。これまで特許非公開の制度がなかったのは、G20(20カ国・地域)の中では日本、メキシコ、アルゼンチンのみだった。遅まきとはいえ国際水準に追いついた。

課題もある。特定重要物資など約130項目は法律に明記されておらず、基幹インフラの事前審査の対象設備なども、今後、国会審議がいらない政省令で定められる仕組みとなっている。法案審議では具体的に示されなかったこともあり、政府による恣意(しい)的な運用につながるとの批判が野党から上がる。

機密情報の取り扱い資格制度「セキュリティークリアランス」の導入も未着手だ。米欧では機微情報を扱う民間の研究者らに対し適格性を確認する仕組みがあるが、日本では国が個人情報を管理することへの反発が大きい。今回は法の成立を優先させる形で見送ったが、日米同盟や先進7カ国(G7)が足並みをそろえて対中、対露政策で連携を強めていくためにも、早急に検討すべき課題といえる。(岡田美月)

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