島根発「コミュニティナース」が九州・山口でも

コミュニティナースとして活動することになり、西部ガスの担当者と打ち合わせをする伊藤歩さん(左)
コミュニティナースとして活動することになり、西部ガスの担当者と打ち合わせをする伊藤歩さん(左)

看護師らが病院外で地域の住民の暮らしを支える「コミュニティナース(コミナス)」という活動が九州・山口で広がりつつある。住民らが集まる場所で健康づくりを支える島根県発の取り組みで、西部ガスは13日から、グループが管理する福岡市内のスポーツ・文化振興施設にコミナスを配置する。5月12日は「看護の日」。高齢化や新型コロナウイルスの感染拡大で高齢者らの孤立が課題となる中、住民を見守る看護の視点が重要になっている。

「地域住民の話を聞きながら生活習慣の改善をしたり、病院とをつなぐ懸け橋の役割を果たしたい」

福岡市博多区のスポーツ・文化振興施設「さざんぴあ博多」で13日からコミナスとして働く伊藤歩さん(36)は意気込む。

コミナスは、島根県雲南市の「コミュニティナースカンパニー」代表、矢田明子氏(42)が始めた取り組みで、個人的な実践から広がった。病院ではなく、地域住民が集う場で活動するのが特徴で、各地で看護師資格を持つ人たちや、同社の養成講座の受講生らが中心となり、健康に関する相談に乗るなどして生活改善の助言や心身のケアを行っている。活動に特別な医療資格は必要ない。

西部ガスは、事業エリアで健康的なまちづくりを推進する目的で、令和2年3月にコミュニティナースカンパニーと業務協力協定を締結。伊藤さんを含め、看護師や保健師の資格を持つ3人が、さざんぴあ博多を拠点にコミナス活動を展開することになった。

住民が集う周辺施設や地域イベントでも交流や相談の場を設ける計画で、西部ガス都市リビング開発部の今村祐介課長は「健康面などで困っていても声を出せない人が地域にたくさんおり、出向いて対話し、支えることが今の社会に求められている。地域の活力があって会社も成長する」と事業の意義を説明する。

各地にコミナスが増えることで住民らの病気の予防効果も期待でき、日本で増え続けている医療費の抑制にもつながる。西部ガスは看護師資格を持ちながら出産などを機に退職した人を雇用するなどして、地域人材の掘り起こしにもつなげる考えだ。

コミュニティナースカンパニーによると、九州・山口では、大分県由布市や熊本県八代市などでも、交流拠点をつくるなどしてコミナス活動を実践している人たちがいる。

保健師と看護師資格を持つ山口県岩国市の赤木千香さん(31)は、コミナスの理念に共感し、住民が集う施設などでボランティアで健康を支える活動に取り組んでいる。赤木さんは山口県東部ヤクルト販売(同市)CS推進室に所属し、会社が取り組む健康教室や、住民と日々接する「ヤクルトレディ」を通して、住民に生活改善の助言を行うこともある。

赤木さんは、国際協力機構(JICA)海外協力隊としてフィリピンで生活習慣病の予防啓発をした経験があり、「住民が病院に来てくれるのを待つのではなく、生活の動線の中で関わり、健康の大切さに気づいてもらうことが大切だと感じた」と話す。

コミュニティナースカンパニーが開く養成講座には、これまでに約550人が受講した。活動が広がる理由について、同社広報担当の藤田奈津子さん(42)は「コミナスは小さな一歩から始められる活動で、誰かを元気にしたいという思いを持つ人の行動を引き出すことにつながっている」と語った。(一居真由子)

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