がん電話相談から

20代男性、甲状腺乳頭がんで手術を受けるべきか

Q 20代男性です。1月、以前から続く動悸(どうき)と不眠で内分泌系クリニックを受診しました。採血、エコー(超音波)、細胞診で甲状腺右葉乳頭がん疑いと指摘されました。

2月、総合病院の頭頸(とうけい)科でエコー、細胞診、CT等の検査を受け、甲状腺右葉に直径7ミリの腫瘍が見つかりました。右気管傍リンパ節に2~3ミリの転移を疑う所見もありました。主治医からは甲状腺右葉切除術および気管傍リンパ節郭清術をすすめられています。

A この腫瘍が乳頭がんという前提でお話しします。大きさが10ミリ以下で転移がない場合は、経過観察も可能であるとガイドラインで示されています。今回、転移を疑うリンパ節も2~3ミリと微小で、経過観察も可能と考えます。ただ、腫瘍がある場所は重要で、7ミリでも気管や、声帯に指令を伝える反回神経や食道などに近い場合、手術すべきだという意見もあります。

Q 今後40~50年は生きたいと思っています。手術をすべきでしょうか。

A 検査の結果、どう見ても乳頭がんであるという場合には、小さいですがリンパ節転移もあり手術を推奨しますが、腫瘍が悪性疑いということで急ぎではないという見方もできます。他方、人によっては腫瘍を残したまま経過を見ることがストレスとなり、手術で切除したほうが大きな心配を感じることなく生活できるという方もいます。

Q 7ミリの腫瘍は「クラス3」と言われました。

A 細胞診のクラス分類ですね。クラス1~5で示されるものですが、最近は「良性」「悪性」「鑑別困難」等で表現されることが多くなりました。クラス3というのは「鑑別困難」です。腫瘍が小さい場合、細胞診で採取できる細胞の質や量によっては判別が難しく、クラス3で摘出したところ良性だったというケースもごくまれですが認められますので、主治医から話をよく聞いておく必要があります。

Q 手術の合併症で嗄声(させい、声がれ)があると聞きますが、私のような手術の場合、どれくらいの確率で起きるでしょう。

A 一般的な甲状腺がんの手術では、永久性の嗄声が起きる可能性は約1%とされます。時間の経過(おおむね3~6カ月)とともに治る偶発性の嗄声は5~6%程度。こちらも腫瘍の場所が重要で、反回神経に強く癒着(ゆちゃく)している場合は腫瘍の大きさが5ミリ程度でも神経合併切除せざるを得ないこともあります。もっとも、このような腫瘍は周囲への浸潤が強いので、結果的に手術をしてよかったと考えられます。

Q 将来的に子供を持ちたいと考えています。手術が生殖機能に影響することはないと聞いていますが、少し不安です。

A 心配いりません。手術で甲状腺を半分切除すれば甲状腺機能が下がることはありますが、必要に応じて甲状腺ホルモン剤を内服することで問題ありません。女性であったとしても、妊孕(にんよう)性(妊娠するための力)や妊娠期間において甲状腺ホルモン剤内服による副作用は関係するものではありません。

Q 手術を受けるべきか、迷いがあります。

A はじめにお話しした通り、大きさが1センチ以下で明らかな転移のない乳頭がんは経過観察も可能であると、ガイドラインで示されています。ご自身のケースでもまず慌てる必要はないと考えます。主治医とよく相談したうえで納得できる治療方針を決めていく時間は十分にあると思います。

 がん研有明病院頭頸科副医長の戸田和寿医師
がん研有明病院頭頸科副医長の戸田和寿医師

回答は、がん研有明病院頭頸科副医長の戸田和寿医師が担当しました。

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