足の指先が地面に着かない「浮き指」の子供たちが増えている。運動不足に伴う足指の筋力低下などが原因とみられるが、昨今の新型コロナウイルス禍で外出の機会が減り、さらなる増加も懸念される。放置すれば腰痛や歩行障害につながる恐れもあり、大阪では今年度から、専門家がAI(人工知能)で小学生の姿勢を分析し、浮き指症状の改善に向けた取り組みに乗り出した。
4月中旬、大阪府泉大津市の市立条東小学校。マットの上で足をそろえ、まっすぐに立つ1、2年の児童を、理学療法士がタブレット端末を使って撮影していた。2分ほど待つと、端末に2枚の画像が表示された。一枚はセンサー付きのマットで測定した足裏の画像。力の入れ具合が色の濃淡で示される。もう一枚は全身を写したもので、姿勢のゆがみ具合が上から直線で描かれている。
ヘルスケアシステム開発会社「Posen(ポーズン)」(大阪市)が手掛けたAIによる骨格分析システム。写真から身体の関節の位置を読み取った上で、身体のゆがみや姿勢バランスを解析する。この日の測定では、児童のほぼ全員が、足の指先ではなく、かかと部分だけに重心を置いて立ち、うち多くが猫背だった。
足指の筋力不足から、かかとに重心が移り、バランスを取るために前のめりの猫背になる-。測定結果は浮き指による姿勢悪化を端的に示していた。
「最近の子供たちの筋力低下は著しい。このままでは多くの人が、高齢になったとき深刻な腰痛や関節の変形を抱えることになる」
測定に携わった橋間(はしま)診療所(同府岸和田市)の橋間誠院長(55)は危機感をあらわにする。
長年、足の研究を続けている橋間院長によると浮き指の原因は複数あり、サイズの合っていない靴を履いている▽幼少期の歩行距離が短い▽ゲームのし過ぎなどによる長時間の前傾姿勢-などが挙げられる。
少し古いデータだが、平成23年に東京都品川区の区立戸越小学校で児童全員の足形を調査したところ、浮き指がある児童は81・7%に上った。昨今のコロナ禍ではその傾向がさらに強まる可能性があり、橋間院長は「自粛生活で子供たちが外に出る時間が減って運動不足に拍車がかかっている」と指摘する。
幼少期に浮き指のくせがつくと、大人になってもその状態は定着し続ける。若年期は日常生活に支障が出ることはあまりないため見過ごされがちだが、30~40年以上の年月を経て腰痛や関節の変形、歩行障害などにつながるケースがある。
こうした状況に危機感を覚えた橋間院長は、上半身をストレッチしながら足指を開いたり閉じたりする「足指エクササイズ」を考案し、小学校2校で導入。今年度からはAI骨格分析システムも導入し、エクササイズによる改善データを蓄積していくつもりだ。
橋間院長は収集したデータを厚生労働省などに提出する考えで、「浮き指を治すことで姿勢の改善や将来の腰痛防止につながることを全国的に知ってもらうきっかけにしたい」と話す。(中井芳野)