【ソウル=時吉達也、千葉倫之】韓国で10日、新大統領に尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏(61)が就任し、5年ぶりに保守政権が発足した。同日午前、ソウルの国会議事堂前で開かれた就任式で、尹氏は「自由民主主義と市場経済」を基盤に韓国を再建し、「国際社会で責任と役割を果たす」と強調した。
式典には岸田文雄首相の特使として派遣された林芳正外相が出席。日韓は文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で悪化し、「過去最悪」とも評される両国関係の改善を急ぐ。
尹氏は16分間の就任演説で、「自由」に30回以上言及。「自由民主主義は平和を生み、平和は自由を守ってくれる」と述べ、自由民主主義国家との連帯の重要性を繰り返し強調した。
北朝鮮に対しては、核開発を中断し非核化に転じれば、同国経済を「画期的に改善」するための「大胆な計画を準備する」と主張。「一時的に戦争を回避する脆弱(ぜいじゃく)な平和」ではなく「持続可能な平和を追求する」とも訴え、文前政権の対北朝鮮融和政策を暗に批判した。
尹氏はこれまで、米韓同盟を基盤にした対北朝鮮抑止力の強化や日米韓の安保協力の重要性を主張してきたが、演説では直接の言及はなかった。
就任式には国内外の来賓や一般国民ら、約4万1千人が参加した。日本からは林氏のほか、鳩山由紀夫元首相らが出席。米国はハリス副大統領の夫、エムホフ氏やウォルシュ労働長官が、中国は王岐山(おう・きざん)国家副主席が出席した。
尹氏は式典終了後、これまでの「青瓦台」に代わる旧国防省庁舎の新たな大統領府で林氏と会談し、「岸田首相と両国関係の改善に向け、ともに努力していきたい。早いうちに首相とお会いすることを期待している」と述べた。林氏は首相の親書を手渡した。