「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

阪神の打順と捕手はコロコロ変わる「猫の目」、中心軸は不動に!

対DeNA戦の阪神スターティングメンバー(左)=横浜スタジアム
対DeNA戦の阪神スターティングメンバー(左)=横浜スタジアム

難しい説明などいりません。チームの中心軸は不動でお願いします。それがチームの骨格を築く唯一無二の選択肢です。阪神は37試合消化時点で12勝24敗1分けの借金「12」。4月後半からチーム状態は上向き気味ですが、納得できないのは矢野燿大監督(53)の選手起用法です。開幕4番の佐藤輝明内野手(23)を2番→3番→4番→3番→4番…。同じく開幕7番の大山悠輔内野手(27)も5番→4番→6番→7番。スタメン捕手は梅野隆太郎捕手(30)と坂本誠志郎捕手(28)の併用。何をテーマにして選手起用しているのか理解できません。今季限りでの退任を表明し、最下位独走の成績不振…の現状で残る命題はチームの骨格を築き、次の指導者にバトンを渡すことです。どっしりとした采配をよろしくお願いします。

■根拠希薄な打順いじり

なかなか珍しい監督の敗戦コメントでした。7日の中日戦(バンテリン)に1対2で敗れ、六回終了時にビハインドなら開幕16連敗を喫した試合後でした。打撃不振の大山を4番から6番に下げ、5番には、どう見ても2番か下位打線に置くのが定石のような山本泰寛内野手を据えた打線の意図を聞かれた矢野監督はこう声を絞り出しました。

「つなぎというか…」と話すと約10秒ほど考え込み「ちょっと説明が難しい、それは…」と言葉をのみ込んだのです。

言葉をなくすほどの、どれほど難解な理由があるのか分かりませんが、なんとなく背景は理解します。この試合でも打線をいじり、4月14日の中日戦(バンテリン)から20試合連続でオーダーを組み替えました。36試合目で32通りの〝新打線〟だったのです。山本のクリーンアップでのスタメンはプロ7年目にして初めてのことでしたね。

つまり、どうやっても打線がつながらない。得点圏打率はこの試合の時点で2割1分9厘。試行錯誤しているうちに、首脳陣の間で「5番山本プラン」が浮上し、それを実行したものの試合後には「説明が難しい…」と下を向くしかなかったようです。アレコレ悩んでいるうちに、本来の基本形を見失い、思考の到着点は報道陣に説明すらできない、根拠の希薄な〝奇手〟だったのでしょう。

しかし、ここでは「5番山本」をほじくり返して、批判しようとは思いませんね。どうしてか…と言うと山本の5番起用は枝葉の問題で、横たわる大問題はチームの幹、中心軸さえも指揮官は見失っているのではないか? と思えることなのです。

3月25日の開幕ヤクルト戦(京セラ)のスタメンをここで書きますね。

1番・近本 2番・中野 3番・マルテ 4番・佐藤輝 5番・糸原 6番・糸井 7番・大山 8番・梅野 9番・藤浪

この試合、大逆転負けを喫して、悪夢の開幕9連敗の入り口になったのですが打線は8点取っています。負けたのは斎藤の中継ぎ起用と、見切り発車の守護神ケラーの大誤算にありますね。つまりベンチの継投ミスです。それが、矢野監督はどう考えたのか分かりませんが、開幕2試合目から理解しづらい選手起用法に〝ハマって〟いきます。

■理解しがたい捕手起用

開幕第2戦では先発捕手を梅野から坂本に代えました。梅野→坂本→梅野→坂本が4試合続き、その後も併用です。かなりビックリしたのは5月3日のヤクルト戦(甲子園球場)です。直前までの巨人3連戦(4月29日~5月1日)は敵地・東京ドームで胸のすく3連勝。原巨人を一気に崩壊させたかのような試合を見せてくれましたが、3試合ともスタメンマスクは梅野でした。守備面の貢献もあり、打撃での貢献も光った3連戦でした。なのに…3日のヤクルト戦のスタメンマスクは坂本。先発投手の西勇輝との相性⁉ 理由はそれですか? でも、昨季までは西勇輝とくれば梅野だったはずでは?

梅野がヤクルト3連戦(神宮)にスタメンマスクを被って出場した4月22日~24日は2勝1敗で勝ち越しています。好調ヤクルト打線に対して、青柳、ウィルカーソン、ガンケルをうまくリードしていたのではないでしょうか? しかも巨人戦3連勝で乗ってきた矢先のスタメン捕手の交代にはどんな根拠、理由があるのかサッパリ分かりませんね。

首をひねるのは捕手の起用法だけではありません。開幕4番の佐藤輝はその後4月13日の中日戦(バンテリン)まで16試合で4番に入りましたが、続く14日の中日戦で2番に。そこから2番で6試合→3番で4試合→4番で2試合→3番で7試合→4番で2試合…。なんだコレ⁉ ですよね。

春季キャンプ、オープン戦で大山との4番戦争が話題になりました。ライバルに競り勝って、今季だけではなく将来のチームの大黒柱として開幕4番に座ったのに、チームの成績不振の影響をモロに受ける形で打順をコロコロと代えられています。

同じことは大山にも言えます。開幕7番スタートの大山は7番で4試合→5番で12試合→4番で10試合→スタメン落ち2試合→4番で7試合→6番で1試合→7番で1試合。まるで落ち着きません。

さまざまな理由があるのは承知しています。開幕3番のマルテが故障で2軍調整。期待したロハス・ジュニアは実力的にとてもクリーンアップを任せられない。佐藤輝や大山も4番でチャンスに凡退が続いてしまった…などなどです。37試合消化時点でチーム打率2割2分5厘、得点108はいずれもリーグワースト。リーグトップの広島が36試合消化時点で161得点ですから、もう53点も差をつけられています。このまま143試合となれば、チーム得点は150~200点ぐらいの差になるのでは?

点が取れないからこそ、矢野監督ら首脳陣はあの手この手を考えて、打線をいじり倒すのでしょう。そうしているうちに、迷路にはまり込み、最後は「説明できない」とうめくしかなくなるのでしょうね。

■今こそ将来の骨格づくりを

しかし、考えても見てください。春季キャンプ前日の全体ミーティングで「俺の中で今シーズン限りで監督を退任しようと思っている」と衝撃の退任表明を行い、どう転んでも来季以降にベンチに座ることはないわけです。監督の退任表明がチーム全体に悪影響を及ぼしたから、現時点での最下位独走があると見ても文句は言われないでしょう。 まだまだ逆転優勝はある!と夢物語を話すのもいいでしょうが、やはり現実的な問題として、やらなければならないテーマは将来に向けての選手育成であり、チームの基盤、骨格を作り上げ、次の監督にバトンタッチすることです。それが今季143試合を無駄にしない-ということです。チームの中心軸となる佐藤輝や大山、梅野のさらなる向上は今や矢野采配のメインテーマのはずです。

ならば、開幕4番の佐藤輝は不動であるべきで、試合後半に三塁から右翼に回すのも首をひねります。大山にしても6番か7番と考えるならば、その打順での勝負強さを求めるべきではないでしょうか。梅野と坂本の併用策は理解すらし難い。昨年オフ、FA(フリーエージェント)取得で他球団流出の心配があった梅野に対して、球団は「梅野なくして優勝はない」と慰留し、年俸1億6000万円(金額は推定)の3年契約を締結しました。捕手併用策は球団の編成計画とも合致していません。よく球団幹部は黙ってみているな…とさえ思います。

中心軸を動かさず、結果が出なくてもじっと我慢して使い切る。そうすれば、自然とチーム力は上がっていきませんか。中心選手の〝虎の目〟ならぬ、猫の目起用はもうやめてほしいですね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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