「療育」という言葉を、聞いたことはありますか。障害のある子どもを育てている方はよくご存じかと思いますが、そうでない方にとっては初めて聞く言葉かもしれませんね。
療育とは、障害のある子どもが社会生活に必要な力を身につけられるよう支援することです。療育機関の先生が子どもの障害特性をみて、どんな取り組みをすればいいかを決めます。21歳の自閉症の息子は幼い頃、療育のおかげで着替えやうがい、靴を靴箱に入れるなど、いろんなことができるようになりました。親にとっても、日々の暮らしでのわが子への接し方を教えてくれる、心強い存在です。でも発達障害児の親御さんの相談を受けていて、気になることもあります。
「自立に向けて、これをした方がいい」「これはやめた方がいい」。療育機関だけでなく、親にはドクターや先輩保護者からも、さまざまなアドバイスが集中します。そのすべてを実践するには、とてつもないエネルギーが必要です。1日は24時間しかなく、子育て以外にも、家事や仕事など、やることはたくさんありますから。アドバイスに応えようと奮闘し、それがかなわず、自分を責めて自信をなくしてしまう…そんな親御さんを、これまでたくさん見てきました。
私には、息子が5歳のときの忘れられない思い出があります。当時の私は「今のうちに、できることは何でもしよう」と、3カ所の療育機関に息子を連れて行っていました。そんな日々に疲れた初夏のある日、ふと「今日は公園に行こう!」と思いつき、療育をサボったことがあります(欠席の連絡はしましたよ)。「広い野原のある公園で、息子とのんびり過ごそう!」「寝っ転がって、一緒に空を見上げよう!」と。