ビブリオエッセー

きっとあなたの「道」がある 「自分道―自分をつらぬき歴史を作った女たち」玉岡かおる(角川SSC新書)

ふと天井近くの本棚を見たら、この本が目についた。玉岡さんが新田次郎文学賞を受賞したばかりの小説『帆神(ほしん)―北前船を馳せた男・工楽松右衛門』を読んでいたので導かれるようにこの新書を手に取った。2009年発行で読んだ記憶はおぼろだ。再びページを開いた。

裏表紙に「人生に迷ったとき『自分道』をつらぬいたそんな先人たちの生き方が一つのヒントになる」と書かれている。玉岡さんは武道や茶道、華道と同じように、自分にしかできない「道」もあると考えた。それが「自分道」。「『自分』を出し切って生き抜いた人たち」として選んだのは7人の女性たちだ。

最初は幕末・維新の長崎でイギリス人を相手に商人の道をつらぬいた大浦慶。後年、事件で打撃を被るが堂々たる女性の生き方だった。次は「女大学」の教えを手本に人を育てた鈴木よね。夫の没後、神戸の鈴木商店を引き継ぎ、大番頭の金子直吉らと大商社に育て上げたが、この本では直吉の妻、金子徳も取り上げている。ひたすら夫を支えてきた徳は鈴木商店の没落後、俳人として生きた。

さらに戦後の満州から娘たちを守り、命がけの帰国を果たした愛新覚羅浩。同じく戦前・戦中の満州で女優・李香蘭として、戦後は山口淑子として生きた一人の国際的な女性について。最後は女性の自由と自立のため闘った平塚らいてうと市川房枝、二人の歩みに焦点をあてた。

偉業はなくとも人生はいろいろ。さて八十代の入口に立つ私の「自分道」はと考えれば、ずっと続けてきたテニスがあった。最近は体力や脚力の衰えを痛感していて、まさに迷いのただ中にある。自分道と記すのもおこがましいが、そこは開き直って自分流に。これでいいと心を奮い起こしてくれた一冊だった。

大阪府岸和田市 増田智子(80)

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