政府の教育未来創造会議(議長・岸田文雄首相)は10日、返済不要の給付型奨学金などで低所得層の大学生を援助している国の修学支援制度を見直し、支援の対象を中間所得層の学生にも拡充することを柱とする第1次提言をまとめた。実験や実習で授業料が高くなりがちな理工農学部系の学生や、3人以上の子供がいる多子世帯の学生について、支援の対象となる世帯年収の条件を緩和する。
現行の修学支援制度は、住民税非課税や年収の目安が約380万円未満の世帯の学生を対象に、給付型奨学金の支給と授業料・入学金の減免をセットで実施している。ただ、恩恵を受けるのは主に低所得層であるため、中間所得層への対応が課題となっていた。
提言では、中間所得層への対象拡大を提唱。政府関係者によると、新たに支援対象とする世帯は、年収600万円以下を基準に想定しているという。
現在、大学生が利用する奨学金の中心は貸与型で、卒業後の返済に苦労しているケースも目立つ。そうした状況を改善するため、返済のタイミングなどを柔軟に選択できる仕組みを創設する。特に大学院生について、卒業後の年収が一定基準に達してから返済できる「出世払い型」の奨学金の導入方針も打ち出した。
さらに提言では、社会人が大学などで学び直す「リカレント教育」について、従業員が授業を受けるための長期休暇制度を導入した企業に対し、支給する補助金を拡充する制度の導入なども盛り込まれた。
提言の取りまとめを受け、岸田首相は「人への投資を通じた成長と分配の好循環を、教育や人材育成においても実現することは新しい資本主義の実現に向けて喫緊の課題。速やかに法令改正や予算措置などの準備を進め実行に移していく」と述べた。