高木菜、小平ら引退…どうなる⁈スピードスケート界

北京冬季五輪スピードスケート女子団体追い抜きのレース後の記念撮影で、カメラマンの号泣に涙顔で大笑いする(右から)高木菜那、高木美帆、佐藤綾乃=2月(共同)
北京冬季五輪スピードスケート女子団体追い抜きのレース後の記念撮影で、カメラマンの号泣に涙顔で大笑いする(右から)高木菜那、高木美帆、佐藤綾乃=2月(共同)

日本スピードスケート界が変化の時を迎えた。北京冬季五輪を2月に終え、2018年平昌五輪女子団体追い抜き、マススタートの2冠を果たした高木菜那らが引退し、同五輪女子500メートル金メダルの小平奈緒(相沢病院)も10月の国内大会を最後に第一線を退く。日本電産サンキョースケート部が廃部となり、強化の中心となるナショナルチーム(NT)のヨハン・デビット・ヘッドコーチ(HC)が退任する中、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪、そして札幌市が招致に乗り出している30年五輪に向け、どのような強化を図っていくのか。日本スケート連盟のかじ取りに注目が集まる。

心細さが残る中でのスタートとなった。日本スケート連盟は4月21日に今年度のナショナル強化選手を発表し、昨年度のメンバーから男子は16人中9人、女子は未定の高木美帆(日体大職)を除いた7人のうち5人が抜けた。

入れ替わりが特に顕著なのは女子だ。高木菜や郷亜里砂(ありさ)、押切美沙紀ら五輪経験者が一線を退き、NTに残ることが確定しているのは佐藤綾乃(ANA)と稲川くるみ(光文堂インターナショナル)の2人だけ。高木美も再始動時期などは未定で、NTではないが短距離陣を牽引(けんいん)してきた小平も引退を決めており、強化関係者は「(14年ソチ五輪後から)8年間、メンバーがほぼ変わらなかった影響はある。若手の育成が急務」と悩まし気に語る。

記者会見で、現役引退の意向を表明するスピードスケート五輪金メダリストの小平奈緒。奥は結城匡啓コーチ=12日午後、長野市
記者会見で、現役引退の意向を表明するスピードスケート五輪金メダリストの小平奈緒。奥は結城匡啓コーチ=12日午後、長野市

NTをめぐっては指導者の交代もさまざまな影響を与えることになりそうだ。平昌、北京の両五輪でメダル量産をもたらしたデビット前HCらオランダ人指導者が退任した。糸川敏彦氏が強化部長とHCを兼任し、10年バンクーバー五輪男子500メートル銀メダルの長島圭一郎氏、同銅メダルの加藤条治氏が強化スタッフに加わったが、その指導力は未知数。選手を送り出すチーム関係者の一人は「正直なところ、(指導陣が)ガラッと変わり、不安はある」と胸の内を明かす。

信頼を勝ち取るためにも、これまで培ってきたオランダ流のノウハウに、日本流の良さをうまく加えることができるかがカギになりそうだが、関係者は「糸川HCの手腕にかかっている」と注視する。所属先の垣根を越えた体制だからこそ強化できる団体追い抜きやマススタートにどう取り組むかも注目点の一つとなる。

一方、新たな刺激も出てきた。北京五輪男子500メートル8位の村上右磨(高堂建設)や男子短距離の松井大和(シリウス)らがNTを離れ、女子短距離のホープで19歳の吉田雪乃(寿広)はNTに加入せず、岩手県盛岡市を拠点に練習を続ける道を選択した。

これまではNTに参加しないトップ選手といえば、小平ら信州大の結城匡啓コーチの指導を受ける選手がほとんどだった。高木美は昨年12月の北京五輪代表選考会の際、「小平選手という存在がNTのメンバーにとっても大きかった。小平選手より速く滑りたいという気持ちを私は感じていた」と語り、NTに所属しない選手への対抗意識が競技を行う上でのモチベーションの一つであったことを明かした。

カナダへ武者修行に行く見通しの村上は「今まではNTの一人だったが、今年はNTを倒すような強い選手になる」と、NT勢との対決を楽しみにする。有力選手を結集して強化するNTではあるが、NTの〝対立勢力〟の増加もまた、スケート界の活性化につながるはずだ。

振り返れば、1988年カルガリー五輪後、同五輪の男子500メートルで銅メダルを獲得した黒岩彰が引退し、その後の競技力が不安視されたが、4年計画のもと、黒岩敏幸、井上純一らが成長し、92年アルベールビル五輪のメダリストとなった歴史もある。

名門の日本電産サンキョースケート部が3月末で廃部になるなどスピードスケートをめぐる環境は厳しいが、そんな状況を打破すべく、4年後、あるいは8年後に向けた青写真をどう描くか。強化部のリーダーシップやマネジメント能力が求められることになりそうだ。(運動部 橋本謙太郎)

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