露産石油、民間企業にも撤退論 経産省と温度差も

ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁で、日本はロシア産石油の輸入を原則禁止すると表明した。ロシア極東サハリンでの石油・天然ガス開発事業をめぐってもロシアと取引を続けることへの消費者の批判を危惧し、民間企業からは撤退論が出ており、権益維持を重視する経済産業省との温度差も広がっている。

「ロシアのエネルギー依存を低くしていこうということは共通認識だ」。9日の記者会見で経団連の十倉雅和会長は露産石油禁輸の動きをこう評価した。実際に、日本企業の間でもロシア離れの動きは出始めている。

石油元売り大手のENEOSホールディングスはロシアのウクライナ侵攻後、ロシアからの調達を取りやめた。同社の杉森務会長は「日本は(石油の)需給が逼迫(ひっぱく)している状況にもなく、(他国からの)代替調達も可能だ」と強調する。

大手商社の丸紅の柿木真澄社長は6日の会見で一部出資する石油開発事業「サハリン1」について「できれば戦時下なので撤退したい気持ちはある」と語った。

一方、経産省を中心に政府内では露産石油の禁輸に慎重な意見は根強い。日本は原油の9割超を中東諸国から調達しており、中東諸国で紛争が起きるなどすれば、調達難に陥る恐れがあるからだ。

萩生田光一経産相もワシントンで4日に行った会見で「資源に限界があるので直ちに(他の先進国と)足並みをそろえるのは難しい」と指摘していた。

石炭、石油と相次いで禁輸に踏み切ったことで今後はロシアからの輸入割合が8・8%と高い液化天然ガス(LNG)の扱いが焦点となる。LNGは火力発電の主たる燃料で、政府の今後の対応が注目される。(永田岳彦)

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