浪速風

〝劇的役割〟を演ずる者

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの全面侵攻後、国外退避させようとする米政府の打診を「必要なのは弾薬で、乗り物ではない」と断った。軍事大国に自身の命を狙われながら、首都キーウ(キエフ)に踏みとどまって国民を鼓舞し、国際社会に支援を求め続けている

▶「英雄とはその個人的資質よりも、劇的状況下で劇的役割りを演ずる者をいうのである」。司馬遼太郎は幕末の長州藩を描いた小説「世に棲む日日」でそう喝破した。コメディー俳優出身のゼレンスキー氏は、全国民と世界の目が注がれる中、ウクライナの独立と抵抗の象徴という自らの役回りを理解していた。

▶ロシアは9日の対独戦勝記念日の軍事パレードで、核戦争勃発時に使用する空中指揮機を飛行させる見通しだ。プーチン大統領は核攻撃も辞さない姿勢を誇示したいらしい。ゼレンスキー氏の登場が天の配剤だとすれば、今後のシナリオにこれ以上の悲劇がつづられないことを願う。

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