石仏は語る

インド的な要素強く 石位寺三尊石仏

石位寺三尊石仏
石位寺三尊石仏

石位寺の三尊石仏は花崗岩(かこうがん)製のようですが、砂質の石材に肉彫りの技巧をこらした奈良時代前期の造作とみられます。日本では最古の石仏ですが、他国から持ち運ばれた石仏ではないかという疑問もあります。また薬師如来三尊ともいわれていますが、仏像の形式が決まる以前の作品であるため、尊名は定まりません。釈迦如来三尊か薬師如来三尊かは不明です。

三尊石仏は高さ約122センチ、幅約132センチ、厚さ約23センチの三角形状の自然石に陽刻する厚肉彫りです。三尊とも単弁の蓮華(れんげ)座があり、全体を前に傾けるという俯瞰(ふかん)的な奥行きのある構造を見せる作風で、肉彫りの高低を巧みに使い分けています。中尊の頭上には天蓋が吊り下げられていますが、立体的な荘厳ではなく、抽象的な装飾です。

中尊は善跏倚坐(ぜんかいざ)する如来形、単弁蓮華座に立体的な倚台に坐っています。両手のひらを重ね臍下(さいか)部あたりで組んだ法界定印を結んでいます。衲衣(のうえ)は左肩から右脇下にかかる僧祇支(そうぎし)、足元まで波状して体躯(たいく)を流れ、右肩と右腕を露出した約76センチの像高です。面相は大きな耳に纏(まと)まった豊かさが見られ、整った柔和な微笑(ほほえ)みがあります。光背は二重身光と二重頭光を負います。

左右には対峙(たいじ)する菩薩形の脇侍(きょうじ)。単弁の蓮華座にずんぐりとした体躯の合掌形立像で、衲衣は体躯に密着。首には瓔珞環(ようらくかん)を飾り、衲衣の衣紋は波状して体躯を流れるように纏わり、衲衣が左右にひらめいています。脇侍の面相は無垢(むく)で柔和、荘重(そうちょう)な表現を見せます。

また、光背は右側は二重頭光を刻んでいますが、左側の脇侍は単円光となっています。右側下隅には清浄な水が入っている澡瓶(そうへい)と思われる容器があります。

石仏には全体に漆箔が施されていたとみられ、耳朶(じだ)裏部分にその痕跡がみてとれます。また、左側脇侍の襞や唇などにもその漆塗りの痕跡がみられます。三尊はインド的な要素が強く、その源流を求める様式が中国にもたらされ、移入したものと考えられます。(地域歴史民俗考古研究所所長 辻尾榮市)

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