【マニラ=森浩】フィリピンで9日、大統領選の投票が行われた。事前の世論調査では、1986年まで20年以上独裁政権を築いた故マルコス元大統領の長男、フェルディナンド・マルコス・ジュニア元上院議員(64)が独走しており、レニー・ロブレド副大統領(57)がどこまで迫れるかが焦点だ。
選挙戦でマルコス氏は、国民の団結を呼びかけた上で、交流サイト(SNS)を駆使して温厚なイメージを演出。父の統治時代を、規律が保たれていて経済的に公平だった「黄金期」と美化し、貧富や首都マニラと地方の格差に不満を抱く層に食い込んだ。
政策面ではドゥテルテ政権の路線を継続する意向を示し、対外的には中国に融和姿勢で臨む可能性が高い。ただ、公開討論会出席を拒否するなど積極的な政策発信を控えており、実際の考えは不明な点が多い。
地元調査機関パルスアジアの支持率調査(4月実施)によると、マルコス氏は56%で、2位のロブレド氏(23%)を2倍以上突き放している。ロブレド氏はドゥテルテ大統領の政権運営を批判しており、強権的な政策を批判する層への支持拡大を狙った。
フィリピンの大統領任期は6年で、憲法の規定で再選は禁じられている。現職のドゥテルテ氏は6月末に退任する。大統領選と同時に実施された副大統領選は、マルコス氏と連携して選挙戦を戦ったドゥテルテ氏の長女、サラ・ドゥテルテ氏(43)=南部ダバオ市長=が優勢だ。