2カ月半にわたるウクライナ侵攻の「成果」を何ら示せず、国民の大量動員を可能にする「戦争宣言」もなかった。プーチン露大統領の9日の演説は、想定外の苦戦を反映し、国民に軍事作戦への支持と結束を訴えることに終始した。ロシアのウクライナ侵略は当面、大きな路線変更のないまま長期化する見通しが強まった。(遠藤良介)
プーチン氏の主張に新味はなく、開戦時の演説内容がほぼ繰り返された。米国はウクライナの「ネオナチ」政権を支持してロシアへの攻撃を準備していたとし、ウクライナ侵攻は「先制的反撃」だったと主張した。北大西洋条約機構(NATO)のウクライナ支援により、「ロシアには決して容認できない脅威」が生じていたという。
ソ連は第二次大戦の対独戦で2700万人とされる犠牲者を出しており、対独戦勝記念日はソ連時代から最重要の祝日だった。プーチン政権は「ロシア人はナチス・ドイツから人類を解放した。その栄えある歴史を欧米が書き換え、ロシアの弱体化を図っている」との宣伝でこの祝日をさらに神聖化し、政権の求心力向上に利用してきた。