ビブリオエッセー

信頼と信念でつかんだ大逆転 「奈落の底から見上げた明日」照ノ富士春雄(日本写真企画)

横綱・照ノ富士関が自らの相撲人生を語ったノンフィクション。あの七転び八起きの復活劇を支えたものは何だったのか、感心しながら読み終えました。ケガと大病に苦しみながら奇跡の返り咲きを遂げ、今場所もひとり横綱で土俵にのぼる姿を見ると、その体調が気にはなりますが応援に力が入ります。

故国モンゴルを離れ、相撲留学で来日。恵まれた体格を生かして一気に大関まで駆けのぼった照ノ富士関。ここから誰が序二段までの陥落を予想したでしょう。膝の痛みに耐えながら出場を続け、さらに糖尿病や肝炎で医者から余命宣告まで受けたそうです。休場を繰り返し、気づけば振り出しに戻っていました。

治療に専念する日々に離れていく人も多い中で、気弱になった照ノ富士関を妻のツェグメド・ドルジハンドさんが支えます。「どんな道に行っても大丈夫だよ。あなたが決めたことはなんでも応援する。あなたが働けないなら、私が一生懸命働くから。心配しないで」。信頼しあっている二人の深い絆を感じました。

それでも伊勢ヶ濱親方は信じていたのだと知りました。必ず復活することを。そして横綱の力を。だから「頑張る姿を見せよう」と言って辞めさせない。深い親心を感じました。

何といっても本人の血の汗にじむような努力と最後は諦めない気持ちなんですね。若い頃は派手に飲み歩いても次の日は勝っていたと正直に語っていますが、こんな話にも親近感を感じました。人柄も魅力なんです。

それから序二段に落ちた最初の土俵で、人もまばらな場内から「頑張れ」の声があがったことが書かれていました。ファンの掛け声が凄く力になるのだと改めて思いました。さて私もそのひとり。これまで以上に相撲が楽しみです。

大阪府高槻市 三野沙織(43)

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