INAC優勝「常勝軍団」再建託された星川監督…選手の個性重視し輝かせる

INAC神戸の星川敬監督(撮影・榎本雅弘)
INAC神戸の星川敬監督(撮影・榎本雅弘)

なでしこリーグ時代の2011、12年シーズンに続き、9年ぶりに復帰したINAC神戸をWEリーグ初代女王に導いた。継続していたリーグ戦の無敗記録は4日の広島戦に敗れたことで、50試合で途切れた。だが、中3日で迎えたノジマ相模原戦でしっかり立て直し、優勝を決めた星川敬監督は「久々に女子サッカーに戻ってきてプレッシャーもあったが、戦い抜いて優勝できた。一人一人が成長したのが、こういう結果になったと思う」と笑う。

澤穂希さんや大野忍さんら11年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会の優勝メンバーを多数抱え、黄金時代を築いた。だが、男子チームも指揮したいとの思いから、13年に渡欧。ポーランドやスロベニアで経験を積む中、新型コロナウイルス禍に見舞われたタイミングで、古巣から熱心な復帰オファーを受けた。

「WEリーグの初代女王を目指すのは魅力的だった」と受諾した理由を話した星川監督は「(INAC神戸は)退路を断ってお願いしてきた。僕が断ったらどうするんだろうとも思った」と打ち明ける。

復帰前のINAC神戸は強豪に数えられながらも、タイトルには届かない状態が続いていた。星川監督はいわば、優勝請負の切り札だった。掲げたのは「選手一人一人が輝くサッカー」。データソフトを駆使して選手の個性や特徴を把握し、固定観念に捉われずに起用し続けた。中盤で才能を開花させた成宮は念願の女子日本代表「なでしこジャパン」入りを果たした。守備的MFの伊藤はサイドハーフやセンターバックでも起用され、殻を破った。何人もの選手が「星川監督は自分が気づいていないことを教えてくれる。今のサッカーは楽しい」と全幅の信頼を寄せる。

抜群の求心力を誇る指揮官は「欧州で所属したのは強いチームじゃなかった。サッカーの知識も増えたかもしれないが、学んだのは人をマネジメントするところ」と話す。多様な人種や宗教の選手が入り交じったチームをどうまとめるか。その経験が若手も多く在籍する多士済々な今のINAC神戸で生きている。

9年前にはなかった日課は、動画編集。INAC神戸だけではなく、気になった欧州サッカーの映像も集めて個々の選手の特徴に合わせて自ら編集し、渡している。9日に18歳になるFW浜野には孫興民(トットナム)やエムバペ(パリ・サンジェルマン)、19歳のセンターバック、竹重にはファンダイク(リバプール)といった具合。「男子のトップの選手のプレーは女子の参考になる」との考えからだ。

新たな手法も取り入れて常勝軍団を再建した指揮官は「(澤さんや大野さんがいた)昔のチームの方がレベルが高かった。そこに追いつけという気持ちでやっている。ただ、今のチームの方が伸びしろがあるのは間違いない」と強調する。目線の先には、日本の女子サッカーを再び世界の頂点に押し上げたいとの思いがある。(北川信行)

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