主張

デジタル監交代 「推進力」の低下を避けよ

デジタル庁発足式後、記者団の質問に応じる平井卓也デジタル相(左)と石倉洋子デジタル監(右)=令和3年9月1日、東京都千代田区(肩書はいずれも当時、三尾郁恵撮影)
デジタル庁発足式後、記者団の質問に応じる平井卓也デジタル相(左)と石倉洋子デジタル監(右)=令和3年9月1日、東京都千代田区(肩書はいずれも当時、三尾郁恵撮影)

デジタル庁の事務方トップの石倉洋子デジタル監が退任し、後任に同庁の最高デザイン責任者(CDO)を務めていた浅沼尚氏が就任した。

経営学者の石倉氏は行政経験はないが、民間企業の社外取締役などで培った知見を生かし、組織改革や人材育成などで活躍が期待されていた。

それだけに昨年9月に発足したばかりの組織のトップが早くも交代した影響は大きい。

何より懸念されるのが、デジタル庁の使命である「行政のデジタル化」の停滞だ。各省庁の既得権益に切り込み、デジタル化を通じた規制改革の断行が求められている。トップ交代で改革に向けた推進力が低下すれば、行政のデジタル化が果たせず、国民利益の向上にもつながらない。

そうした事態を避けるため、岸田文雄首相は行政のデジタル化の推進に向けて指導力を発揮してもらいたい。

デジタル監の交代について、牧島かれんデジタル担当相は「当初の役割を果たせたものとして、次の世代に引き継ぎたいとの意向だった」と語った。石倉氏には体調を崩すなどの事情もあり、早期退任を決めたようだ。

各省庁に分散されている情報システム業務の発注などを一括して担うデジタル庁は、菅義偉前首相の肝いりで誕生した。IT分野に強い民間人材を積極的に登用し、官民のデジタル化の司令塔と位置付けられている。

しかし、その内実はかなり厳しい。同庁では役所特有の縦割り組織を排し、プロジェクトごとにチームを編成する柔軟な組織運営を特徴としている。ただ、官民の寄り合い所帯のため、意思決定の仕組みが確立されておらず、責任の所在は曖昧だという。

これでは省庁間の高い壁を崩すことなどできない。理想に反した業務に失望し、退職する若手職員も出ている。迅速な意思決定システムを確立するため、現場の裁量を広げるなどの実務的な取り組みが求められよう。デジタル監が持つ権限の拡大も重要だ。

そのうえで同庁が行政デジタル化の司令塔としての役割を果たすには、政治の強い意志が不可欠である。首相や担当相だけでなく、政権全体で行政デジタル化を推進する意義を明確化し、国民の利便性を向上させる実効的な規制改革を進めてもらいたい。

会員限定記事会員サービス詳細