書店バックヤードから

悩める30-40代にヒントくれる一冊

『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』(左、東洋経済新報社)と『キリスト教は役に立つか』(新潮選書)
『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』(左、東洋経済新報社)と『キリスト教は役に立つか』(新潮選書)

大阪の書店員がおすすめ本について語り合う「書店バックヤードから」。今回は30~40代をテーマにしました。仕事や子育てが忙しい時期であり、家庭を持ったり家族との別れを経験したり、ライフステージが変化しやすい年代でもあり、将来設計に不安を覚えることも少なくありません。そんなときこそ読んでおきたい、人生のヒントになりそうな本を推薦してもらいました。(司会は文化部・田中佐和)

紀伊国屋書店梅田本店・百々典孝さん選

・リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、池村千秋訳『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)

・クリストファー・ロイド著、/野中香方子訳『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』(文芸春秋)

・稲見一良著『ダック・コール』(ハヤカワ文庫JA)

百々 現在51歳の僕がお薦めするのは『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 100年時代の人生戦略』です。平均寿命が延びる中、定年まで働いても老後のお金は足りないし、友達がいないと余暇の過ごし方も分からない。そうならないように、戦略的に何を準備すべきかが書かれています。

リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、池村千秋訳『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)
リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、池村千秋訳『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)

中川 翻訳本だけど、日本の社会状況にもマッチするの?

百々 人生100年時代に一番早く到達する日本をモデルに研究した本なので大丈夫です。それにこの本はお金だけじゃなくて、健康や教養も含めて準備すべき「資産」だといっていますね。もう一冊紹介したいのが「137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史」です。

中川 だんだん長くなっていくな(笑)。

百々 この本がすごいのは、宇宙の成り立ちから現代までの森羅万象を分野を横断して1冊にまとめたところ。一般教養の幅を広げてくれます。

田中 面白そうですね。私は毎日仕事で頭がいっぱいで、仕事以外の一般教養や雑学を学ぶのがつい後回しになってしまって。

百々 時間が余ったら勉強しようと思っている人ほど難しい。老後に知識を詰め込もうとしても追い付かないですよ!

田中 たしかに…。次はこの中で最年少の持田さん、お願いします。

MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店・持田碧さん選

・来住英俊著『キリスト教は役に立つか』(新潮選書)

・友松圓諦著『法句経講義』(講談社学術文庫)

・河合隼雄著『河合隼雄自伝-未来への記憶-』(新潮文庫)

持田 今年36歳になるんですが、もしかしたらこの先1人で生きていく人生もあるかもしれないなと考えたときに、中高生の頃にはまっていた作家の須賀敦子さんを思い出しました。須賀さんは30代でご主人と死別して69歳で亡くなるんですが、いつも芯の部分にはカトリックの信仰があって。「自分を支える信仰を持つってどういう感覚だろう」と興味がわいて見つけたのが来住(きし)英俊さんの『キリスト教は役に立つか』です。

来住英俊著『キリスト教は役に立つか』(新潮選書)
来住英俊著『キリスト教は役に立つか』(新潮選書)

田中 タイトルからして、客観的に宗教を分析した本なのでしょうか。

持田 そうですね。著者はカトリックの神父さんですが、勧誘的ではないので読みやすいです。なるほどと思ったのは、信仰している人にとってイエス・キリストは常にそばにいて対話している感覚なので、孤独に耐えるときに支えになると。この先、人生の困難を乗り切るためのよりどころの1つに宗教も入ってくるのかなと思いました。

もう1冊に挙げた河合隼雄さんの自伝は、数学教師から心理学者になった河合さんの人生がとにかく面白い。自分さえ閉じていなければ、人生は思いもよらない方向に開けるんだと元気をもらえる本です。

田中 締めは60代の中川さんです。

スタンダードブックストア・中川和彦さん選

・アレン・ギンズバーグ著、柴田元幸訳『【新訳】吠える その他の詩』(SWITCH LIBRARY)

・木島始編『対訳 ホイットマン詩集 アメリカ詩人選(2)』(岩波文庫)

・開高健著『開高健の本棚』(河出書房新社)

中川 メインは米国の詩人、ギンズバーグの詩集『【新訳】吠(ほ)える その他の詩』です。彼は米国の詩人、ウォルト・ホイットマンの継承者といわれている人で。ホイットマンは詩の長さやリズムを無視してるところがあって、そこに共感するものがあったんやろうなと思う。ただ、ホイットマンの詩は割と分かりやすいけど、ギンズバーグの詩は正直読んでもよく分からないし、なんやこれって思うんですよね。でも、なぜかパワーを感じてエネルギーを得られる。

アレン・ギンズバーグ著、柴田元幸訳『【新訳】吠える その他の詩』(SWITCH LIBRARY)
アレン・ギンズバーグ著、柴田元幸訳『【新訳】吠える その他の詩』(SWITCH LIBRARY)

百々 型にはまらずに、言葉を自由に駆使して何かを伝えようとしたものが「吠える」なのかな。

中川 僕も「これが普通でしょ」とこっちへ持っていこうとする力にとらわれたくないなっていうのがあって。若いころから自分の基準を持つことが大事やと思いますね。

田中 本が出そろったところで、最後にご報告があります。このコーナーの初回から支えてくださった持田さんは今回で最終回となります。4年間、お世話になりました。

持田 毎月楽しくいろんなお話が聞けて、私も「読んでみよう」と思う本の引き出しが増えました。これからも皆さんの選書を楽しみにしています。

田中 次回からの新メンバーにもどうぞご期待ください。

大阪にある本屋さんの書店員たちが集まり、毎月テーマに沿ってそれぞれが本を選び、語り合います。

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