ロシアのウクライナ侵攻以来、日本共産党の矛盾が顕著だ。志位和夫委員長は平成29年10月の演説で「全ての戦力を放棄し、平和外交によって国を守っていこう、それが9条の精神だ」と述べた。今年1月のしんぶん赤旗の号外にも「9条にそった平和外交こそ日本を守る道」とある。
しかし志位氏は2月24日、「仮にプーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです」とツイートした。明らかな論点ずらしである。
では他国が日本に侵攻してきた場合はどうするのか。志位氏は4月7日の党会合で、「自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守りぬく」と述べた。これは、自衛隊は違憲であり「段階的解消」を目指すとする共産党の主張と矛盾するのではないかという批判に対しては、平成12年の党大会で決めたことだと反論した。要するに志位氏は、共産党の矛盾が20年以上前からだったことを暴露したわけだ。
読売、日経、産経の各紙が当該矛盾を指摘した一方、朝日は4月9日付朝刊で、ジャーナリストの池上彰氏が「日本の民主主義の底を共産党が支えてきた」と評価し、一橋大学教授の中北浩爾氏が「共産党こそがゲームチェンジャーになりうる存在」とエールを送る記事を掲載した。
毎日は3月15日のニュースサイトに、日米安保体制こそが「日本を危険にさらす重大な根源」であり安保条約廃棄こそが「日本とアジアの平和にとっての巨大な前進の一歩」と主張する志位氏の寄稿を掲載した。
共産党の矛盾は追及せず、共産党を応援する有識者の見解や、安保を廃棄すれば平和は守られるかのような志位氏の主張を掲載する。
このように朝日と毎日は共産党に大変優しい。そしてまさにそれにより、両紙は政治的偏向を露呈し信頼性を失っている。SNS時代の一般人は以前のようにたやすくだまされたりはしない。両紙にはその認識が欠けているようだ。
志位氏は4月3日、「共産党は『正しい政策を掲げる』点で首尾一貫」という内田樹・神戸女学院大学名誉教授のしんぶん赤旗への寄稿を引用し、「嬉しいエールです。ご期待にこたえるべく奮闘します」とツイートした。志位氏に自己矛盾の認識はない。
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【プロフィル】飯山陽
いいやま・あかり 昭和51年、東京都生まれ。イスラム思想研究者。上智大文学部卒、東大大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。近著は『中東問題再考』。