投資額が急増、気候変動に挑むスタートアップに追い風が吹き始めている

「多くの起業家たちにとって3〜4年前の段階では、こうしたアイデアで投資家から資金を調達できるか定かではありませんでした」と、Yコンビネーターグループのパートナーで気候変動対策を担当するグスタフ・アルストロマーは指摘する。「でも、いまは確実に資金調達できるようになっています」

これらの企業は、拡大するトレンドに乗ろうとしている。米国を拠点とする気候変動関連のスタートアップは、21年にベンチャーキャピタルから400億ドル(4兆9,470億円)以上の資金を調達しており、この額は13年に比べて100倍にもなっている。

気候変動関連の技術への関心が高まった背景には、いくつかの要因がある。一例として挙げられるのは、電気自動車(EV)の新興メーカーのリビアンのように、クリーンテクノロジーで成功した企業が投資家に見返りを与え始め、より多くの企業がこうした技術に関心をもつようになっていることだ。

また、脱炭素化に対する政治的な意志も、ここ数年で強まっている。欧米諸国の指導者たちは30年までに温室効果ガスの排出を大幅に削減するよう要求しており、それを可能にする技術を構築したいスタートアップにとっては市場における機会が生まれている。

もうひとつの大きな魅力は、起業家たちだ。学術研究をビジネスの世界に持ち込んだ研究者によって、数十年もの間クリーンテックは主導されてきた。しかし、Yコンビネーターに出資を求める気候変動分野のテック起業家の多くは、アマゾンやグーグル、Airbnbなどのソフトウェア企業出身者なのである。

「ソフトウェア会社に近いスピード感で研究結果を実装できています」と、Alga Biosciencesを立ち上げる前にデータ系スタートアップに勤めていたブラウンは語る(Alga Biosciencesの共同創業者は、ふたりとも化学者だ)。藻類を牛の飼料に混ぜた場合の効果の検証を研究者たちは始めたばかりだが、ブラウンのスタートアップは15,000頭の牛に飼料を与えて今年の秋までに製品の商用化を目指す予定だという。

ハイペースな開発に苦言も

こうしたハイペースな開発は、投資家にとっては魅力的かもしれない。しかし、研究者たちは科学がゆっくり進歩するには理由があると警告している。

藻類を使った牛の飼料添加物のほとんどは、「牛肉生産のライフサイクル全体で排出量を削減するという主張を証明できていません。結果として、より多くの牛肉が生産されてしまう可能性もあります」と、ニューヨーク大学の環境学助教のマシュー・ハイエックは指摘する。

こうした技術的な“応急処置”は、気候変動に対する罪悪感から人々を解放する免罪符にすぎないと、ハイエックは指摘している。さらに技術者たちは、自分が開発したプロトタイプがもつ影響を過大評価した場合、結果として効率のいい解決策の誕生を遠ざけてしまうこともある。

とはいえ、ハイエックはAlga Biosciencesについては何の問題もないと言う。カーボン・オフセットのクレジットを販売するわけではなく、「民間からの投資と成長を求めていることは喜ばしいと思います」とハイエックは語る。

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