ロシアによる侵攻が続くウクライナのベレシチュク副首相は6日、ウクライナ部隊や市民が籠城する東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所から女性や子供を含む市民50人が退避したと発表した。同国のゼレンスキー大統領は同日、ロシアが第二次大戦の対ドイツ戦勝記念日とする9日までに戦果を上げようと攻勢を強める恐れがあることを念頭に国民に警戒を呼び掛ける一方、「戦争終結の兆候はない」との認識を示した。
ベレシチュク氏は6日、フェイスブックを通じ、同製鉄所からの新たな市民退避に成功したと表明する一方、「露軍の挑発や停戦違反が相次ぎ、退避は遅れた」と指摘。7日も退避作業を進める意向を示した。
露主要メディアによると、露国防省も6日、退避した市民50人を国連と赤十字国際委員会(ICRC)に引き渡したと発表した。
同製鉄所をめぐっては、1日までに市民100人超が退避。露国防省は4日、市民の退避のために5~7日に一時停戦すると発表した。しかし、ウクライナ側は5日、露軍が約束を破って攻撃を続けていると非難。5日の退避は実現していなかった。現在もなお市民100人以上が製鉄所内に残っているとみられる。
市民退避が進み次第、露軍が製鉄所内のウクライナ残存部隊の掃討に乗り出す可能性も指摘されている。
一方、ゼレンスキー氏は6日、9日のロシアの対独戦勝記念日を念頭に「今後数日間は空襲警報を無視しないように」と国民に訴えた。米欧やウクライナは、プーチン露大統領の演説も予定される9日までに露軍が占領地域の拡大などを図り、攻勢を強める恐れがあるとの見方を示している。
ゼレンスキー氏は6日、英シンクタンク「王立国際問題研究所」でのオンライン演説で、「ロシアに戦争を終結させる意図は見えない」とし、侵攻は長期化するとの見方を示した。ウクライナメディアが伝えた。
露国防省は6日、東部ドネツク州とルガンスク州へのミサイル攻撃や空爆で、ウクライナ部隊300人以上を殺害し、弾薬庫や兵器を破壊したと発表した。