記者発

「タメ口」ニュース 人気だって ソウル特派員・時吉達也

ソウルでの留学時代、つたない韓国語で書いた大学卒業論文の第1稿に対し、「全面差し替え」を命じられたことがある。内容の問題ではない。書き言葉を使うべきところ、「です、ます」調の話し言葉を誤用していたためだった。

ニュースの記事ではどうだろうか。主に書き言葉が使われるが、最近は「です、ます」調を用い、親しみやすさを強調することも増えたように思う。韓国ではさらに、近年新たな文体が普及している。いわゆる「タメ口」でニュースを伝える媒体が人気を集めているのだ。

「あれ、ICBMってなんだっけ」「前から挑発やってたじゃん。今回はなんか違うの?」。北朝鮮が3月に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)に対し、韓国のニュース配信媒体「ニューニーク」は、こんな見出しの記事を発表した。同社は時事問題を分かりやすく解説した「ニュースレター」を毎日配信。サービス開始から3年あまりがたち、購読者数は40万人を突破している。

タメ口交じりの文体による記事配信は、購読者の9割を占める20~30代を意識したものだ。日本より急速に進んだ「新聞離れ」で子供のころからニュースを文字で読む習慣がない若者たちに、「友達に話すように、難解なニュースを易しく解説する」ことを狙う。

韓国特有の「ネット掲示板」文化も、ニュースの文体に影響を与えている。韓国ではインターネット上で情報収集をする際、公式サイトよりも各分野の匿名掲示板が活用され、口コミのレビューなどを含め信頼度が比較的高い情報を得られることが多い。ニュースレターを購読する30歳の女性会社員は「匿名掲示板で丁寧語を使う人はいない」と指摘。「オンライン上のコミュニティーに慣れた世代には、『タメ口』の文章がより親しみやすい」と話す。

ユーチューブやTikTok(ティックトック)といった動画配信アプリの普及もあり、年々文字によるニュースに触れる時間が減少しているのは、日本も同じだ。「遠くない将来、タメ口の記事が一般的になることだって、あり得るかもね」。…いや、さすがに違和感が大きすぎる気もするが、どうだろうか。

【プロフィル】時吉達也

3年間の韓国留学後、平成19年入社。社会部で裁判・検察取材を担当し、外信部では平昌五輪や南北・米朝首脳会談を現地で取材。昨春から現職。

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