広瀬すず、感情のバランスに悩む 映画「流浪の月」

「どの役も難しい」と真摯に仕事に取り組む広瀬すず(石井健撮影)
「どの役も難しい」と真摯に仕事に取り組む広瀬すず(石井健撮影)

この映画を一言で説明するのは難しい。「流浪の月」(李相日=リ・サンイル=監督)。醜悪な現実の中をさまよう2つの汚れなき魂の巡り合いを描くとでもいおうか。「なんですかね、この〝感情の仕事〟って?」。ヒロインを演じた広瀬すず(23)も、演じることについて改めて思いを巡らせた。

広瀬が演じる家内更紗(かない・さらさ)は、15年前に起きた女児誘拐事件の被害者。恋人(横浜流星)はいるが、幸せと呼ぶには問題を抱えている。

ある日、事件の加害者とされた佐伯文(松坂桃李=とおり)と偶然再会する。あの事件。そこでどういう時間が流れていたのか。2人しか知らない。

李監督の映画は「怒り」(平成28年)以来。あのときは、まだ高校生だった。

「当時、私にできることは出し切った。ただ、李さんが求めていることには応えられたか…」。冷静に振り返る。「応えられなかったっていうなら、今回の方が正しく当てはまるかも」ともいう。

更紗と文。2人の関係性は複雑だ。文は、感情を表に出さない。だが、クライマックス。抑え続けた心情を吐露する。それを、離れて見つめる更紗。

「なんとも言えない感情になりましたね。恋愛じゃない。家族でも友達でもない。同志でもない。でも、愛情はある。救ってあげたいという情もある。母性のようなものも出てくる。すごく難しいバランス感」

世間は、2人の関係を理解しない。

「理解されない人物。だから、簡単に理解できる役ではない。きっと、更紗の心の底には爆弾みたいなものがあって、それを癒やしてくれるのが文だけなんだと考えた。それが、正解なのかは分からない」

独特のかげりをまとって登場する松坂を絶賛する。

「見た瞬間、『文だ!』って思う。『私を置いていかないで』って焦ってしまうほど素晴らしかった」

岩井俊二監督の「ラストレター」、吉永小百合主演の「いのちの停車場」など話題の映画への出演が続く。テレビドラマでも引っ張りだこの国民的な若手女優。演じることについて改めて考えた。考えて、悩んで、また考えた。

「どの役も自分自身じゃない。知らない人。台本という限られた文章から生まれた人物。その生涯を演じる。どんな役も全部難しい。なぜ、ここで涙するのか。笑うのか。うーん。何ですかね、この芝居という感情の仕事って?」

凪良(なぎら)ゆうの同名小説が原作。本屋大賞受賞作だ。

共演は多部未華子、柄本明、白鳥玉季(たまき)ら。撮影監督は、米アカデミー賞の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」を手掛けたホン・ギョンピョ。(石井健)

ひろせ・すず 平成10年生まれ、静岡県出身。25年、女優デビュー。映画「海街diary」(27年、是枝=これえだ=裕和監督)で日本アカデミー賞新人俳優賞など各新人賞を総なめ。「ちはやふる」(28年)で映画単独初主演。NHK連続テレビ小説「なつぞら」(31年)のヒロインなどドラマ出演も多数。

13日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。2時間30分。

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