生きもの好〝紀〟心

石ころ入門④ 「天然ガラス」のあれこれ

筆者が長野県で採取した黒燿石=小泉奈緒子学芸員提供
筆者が長野県で採取した黒燿石=小泉奈緒子学芸員提供

これまでお話ししてきたように、岩石は「鉱物またはガラスの集合体」であり、今回はこのうちの「ガラス」についてのお話です。ガラスは窓や食器など私たちの生活の中で見かける機会が多い物質ですが、石ころ分野でのガラスは火山など「天然の環境でできたもの」を指します。鉱物が規則的な結晶構造を持つのに対し、ガラスはその構造が不規則であることが特徴です。

天然のガラスは、岩石が高温になって溶けたマグマが急激に冷えた際に作られます。ガラスの形成にはこの冷却速度が重要で、千度を超えるような高温から急激に温度が下がることにより、その中に含まれる成分が「規則的に並ぶ暇もなく固まる」ことでガラスができるのです。

「ガラス」というと、食器など製品のイメージから透明な物質を想像する方も多いと思います。ですが、天然のガラスはその不均質性や、さまざまな不純物を含んでいることから、不透明な場合も多くあります。

天然のガラスで最も知られているのは「黒燿石」ではないでしょうか。これは火山ガラスの一種で、基本的に流紋岩質マグマの急冷によってできた黒い石のことです。日本でもいくつか有名な産地が知られており、古くから石器や装飾品などに幅広く利用されてきました。

学生の頃、長野県に出かけた際に黒燿石の産地に案内してもらったことがあります。季節は3月下旬、まだ地面が雪に覆われている極寒の中、雪解け水が流れる小川に入って凍えながら採取をしました。初めは手袋をしていましたが、川底が暗くて見つからず、途中から手袋を外しました。

黒燿石はガラスなので、うっかり鋭利な部分に触れると簡単にけがをしてしまいます。零度近い水の冷たさに耐えて慎重に探したところ、数センチ大の黒燿石をいくつか採取することができました。手にした黒燿石は、ライトにかざすとわずかながらも光を透過して天然のガラスの美しさに感動したことを覚えています。

さて、天然のガラスができるのは地球上では火山が最も一般的です。しかし、火山以外にもガラスができる場合があります。例えば隕石(いんせき)が地表に衝突し、その衝撃で岩石が溶かされてガラスができることがあります。こういった物質はテクタイトと呼ばれます。また、地表への落雷によって岩石が溶けた際にもできることがあり、これは「雷管石」や「雷の化石」などと呼ばれます。このような天然のガラスはレアなので、見かけた際はぜひじっくり観察してみてください。

(和歌山県立自然博物館 小泉奈緒子)

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