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更年期離職を防ぐ社員交流会

更年期をテーマにしたオンラインセミナーの画面
更年期をテーマにしたオンラインセミナーの画面

労働者の健康に寄り添う産業医は、診断や治療はできないが、働く人の相談にのり、適切な医療や社内支援につないでくれる。もし専門が産婦人科なら、女性にとって心強い存在だ。

複数の企業で産業医を務める産婦人科医の飯田美穂さん(38)は、更年期世代の働く女性たちの悩みに耳を傾けてきた。

「ホットフラッシュや膣の乾燥といった女性ホルモン不足による症状は、婦人科での治療で緩和が期待できます。一方、気分の落ち込みなどの精神症状は改善に時間がかかる場合もある。中高年女性は職場で重責を担っていたり、家庭で子供の思春期や親の介護に直面していたりストレスが多い世代。更年期とは直接関係しない本格的な鬱などの可能性もあります」

この世代特有の事情への理解とサポートがない環境では、悩みを抱え込んでしまう女性が少なくない。「面談していた女性が離職してしまったケースもあった」と飯田さんはいう。

40~50代女性の就業率が7割を超える中、離職予防に力を入れる企業も出てきた。従業員の半数を、更年期やそれに近い世代の女性が占めている化粧品大手「ポーラ」は更年期に関する研修を導入。全社員が更年期症状の知識や、仕事との両立に悩む女性への接し方などを学べる仕組みを整えた。

同社の更年期ケアが注目を集める理由は他にもある。社員による有志の交流会「クラブアマゾネス」の活動だ。40~60代の社員が「更年期の心と体」などをテーマに、ランチタイムを使ったオンラインセミナーを自発的に開いている。

「〝大人世代〟の女性たちの、人には言えない心と体の悩みに寄り添うコミュニティーを創出したい」と、会を立ち上げたメンバーの一人、馬場智(ちえ)さん(52)。「私自身、50歳を迎えたとき、予測もできなかった体の変化に戸惑い、同じ悩みや経験をもつ職場仲間と話すことで救われたことが発足のきっかけとなった」と話す。

同社持ち株会社の産業医として、セミナー講師に招かれた飯田さんは「婦人科受診に加え、コミュニケーションの場があれば、仕事と家庭との両立におけるストレスを軽減し、症状の改善にもつながると考えられる。医療だけでは解決できない部分を補ってくれるのではないか」と、この活動に期待を寄せている。

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