【ロンドン=杉本康士】英国を訪問中の岸田文雄首相は5日午前(日本時間同日夕)、ロンドンの金融街シティーのギルドホールで演説した。「安心して日本に投資をしてほしい。インベスト・イン・キシダ(岸田に投資せよ)」と述べ、自身が掲げる「新しい資本主義」を説明し、対日投資を呼びかけた。新型コロナウイルス対策に関しても「6月には他のG7(先進7カ国)諸国並みに円滑な入国が可能となるよう水際対策をさらに緩和していく」と述べ、投資家らに来日を促した。
安倍晋三元首相は平成25年に米ニューヨーク証券取引所で「バイ・マイ・アベノミクス(アベノミクスは「買い」だ)」と訴え、強い印象を残した。首相の訴えはこれにならった形だ。夏の参院選についても言及し、「新しい資本主義」に向けた改革を実現するため「石にかじりついても勝ち抜く」と強調した。
首相は「新しい資本主義」について「一言でいえば資本主義のバージョンアップだ」と説明。官民連携を掲げ、①人への投資②科学技術・イノベーションへの投資③スタートアップ(新興企業)投資④グリーン、デジタルへの投資-を4本柱と位置づけた。
人への投資では、賃上げ税制導入のほか、預貯金を資産運用に誘導する仕組みの創設などで「資産所得倍増プラン」を進めると説明した。科学技術に関しては、AI(人工知能)や量子など5領域で国家戦略を明示する方針を表明。「民主主義と権威主義の競争が激化する中で、最終的な勝者を決めるのは科学技術の力だ」と強調した。
さらに、新興企業育成5カ年計画をまとめるとし、「戦後に次ぐ第2の創業ブームを日本で起こしたい」と強調。脱炭素化に向けて今後10年間で官民協調により150兆円の新たな関連投資を実現すると強調し、「安全を確保した原子炉の有効活用を図る」と述べた。デジタルトランスフォーメーション(DX)に向け「4万以上のアナログな規制を洗い出し、3年間で一気に見直す大改革を進めていく」と強調した。
一方、首相はロシアのウクライナ侵攻を非難する立場を改めて表明。核使用を示唆するプーチン大統領を念頭に、自身が被爆地・広島の選挙区出身の政治家であることを紹介した上で「私は特別な強い感情を抱く」と述べ、「暴挙には代償と責任が伴うことを明確に示していかなければならない」と訴えた。