ちば人物記

森林整備団体の林隆通理事長 大けがも信念揺るがず

「若い会員が増えており、心強い」と語る林隆通さん
「若い会員が増えており、心強い」と語る林隆通さん

森は、人が整備することで、同じ場所とは思えないほど様子が変わるという。生い茂った草木に日の光が遮られ、暗くじめじめとした森でも、枝打ちや間伐、倒れている木の除去などを行うことで、それぞれの木や下草に温かい光が注がれるようになるのだ。

今はその変わりようを直接、現場で見ることはない。副理事長の平島知彦さん(69)ら、仲間に送ってもらった画像をスマートフォンで確認し、目を細める。

平成28年6月、理事長を務めるNPO法人「ちば森づくりの会」(千葉市)のボランティア活動で、市内の森で倒木処理をしていた。その時、折れた幹が肩から腰を直撃。腰椎損傷の大けがを負い、車いす生活となった。

森林での作業が大好きだっただけに、「もう、現場には出られないかもしれない」と絶望したが、不思議と、会をやめるという考えには至らなかったという。ともに会を引っ張ってきた平島さんに、「事務局ならできるから」と告げた。活動の方向性を決めるほか、市や森林組合、山主とのやり取りで整備計画を立案。経理も行い、現場で整備を行う会員を支える。体に障害が残るほどの大けがも、「荒れ果てた森林をよみがえらせたい」という信念を揺るがせることはなかった。

平島さんは、「林さんがいるから、会が存続している」と話す。会は、木を切り倒すときは複数の人で行うなどの安全管理を改めて徹底した。

今年3月19日の朝、千葉市若葉区。森の中にあるログハウスの前に約20人の会員が集まった。ミーティングでは、「安全が何よりも優先します。年度末まで事故がないようにしましょう」と呼び掛けた。重みのある言葉に身を引き締めた会員は、その日のそれぞれの作業場所に向かった。自らは森林整備で出た木材を使って、スマホを立てる台などを作る作業に熱中した。

脱炭素やSDGs(持続可能な開発目標)への流れもあり、二酸化炭素を吸収して水源を養い、生物の多様性を維持するという森林の機能の重要性が再認識されている。だが、「社会的な使命以上に、達成感を楽しんでいる」と、あくまで自然体だ。

人の手で木が植えられた人工林については、「5~10年の間に整備をしなければ、森の機能は死んでしまう」と警鐘を鳴らす。5千ヘクタール近い千葉市の森林のおよそ半分が人工林という。広大な森林の全てを整備できるわけではない。「やれる範囲は知れている。それでも、『市民参加の森づくり』の場を提供し続けたい」とほほ笑んだ。(高橋寛次)

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