投票したはずが…なぜ参院選比例で「得票ゼロ」が相次ぐのか

投票したはずの候補者の得票がゼロだった-。令和元年7月の前回参院選比例代表を巡り、市民らが投票用紙の再点検などを求めた訴訟で、原告側は請求を棄却した大阪地裁堺支部判決を不服として控訴した。今夏にも参院選があるが、実は比例代表の「得票ゼロ」は過去にも起きており、票を数え直して訂正したり、刑事事件に発展したりしたケースもある。相次ぐトラブルの背景には、何があるのか。

大阪地裁堺支部の訴訟は、堺市美原区の開票結果で山下芳生(よしき)氏(共産)の得票がゼロとなったことをめぐり争われた。党副委員長の山下氏は、全国で4万8932票を得て4選を果たしたが、投票したと主張する市民らは投票用紙の再点検を要望。市選管が拒否したため、「得票をゼロとされ、精神的苦痛を受けた」として市民らが市に損害賠償を求め提訴した。

だが、地裁堺支部判決は請求を棄却。原告側は4月上旬、判決を不服として控訴した。原告の一人、山口義弘さん(78)は「このままで収めることはできない。同様のことが起こり続けてしまう」と憤る。

比例代表の得票ゼロをめぐるトラブルは、直近3回の参院選で少なくとも7件起こっている。ミスを隠蔽(いんぺい)するため約300の白票を水増しした高松市の事例は、刑事事件に発展。千葉県富里市や静岡県富士宮市では投票用紙の再点検などを行い、開票結果が修正された。

北海道幕別町では、町民の指摘を受けた町が「誤りの可能性がある」としたものの、投票用紙の再点検はしなかった。開票結果の見直し作業をするかどうかについて、総務省選挙課は「各自治体選管の判断」と説明。明確な基準はなく、自治体に委ねているという。

なぜ、参院選比例代表で「得票ゼロ」が相次ぐのか。指摘されるのは、開票作業の複雑さだ。平成13年から非拘束名簿式が採用されたことで、従来は政党名のみの記載だった投票が候補者名でもできるようになった結果、作業は煩雑を極めている。

19年以降でみると、各選挙の候補者数は155~186人。開票作業は、政党名での投票も含めれば投票用紙を200近くに分別する必要がある。

選挙制度に詳しい東北大大学院情報科学研究科の河村和徳准教授は「ミスを完全に防ぐには、現在の記名式の投票から電子投票などへ変更した方がいい」とする。投票用紙を仕分ける必要がない電子投票ならばミスが起こりにくいと考えられるためだが、国政選挙での電子投票導入の議論は進んでいない。

自治体への選挙実務研修なども行う一般社団法人、選挙制度実務研究会の小島勇人代表理事は「ミスをなくすには『急がば回れ』しかない。一つ一つの作業を確認しながら、落ち着いて進めればミスに気付くことはできる」と話している。(藤谷茂樹)

【用語解説】非拘束名簿式比例代表

政党の総得票数で各党の議席配分と当選者が決まる比例代表で、候補者個人への得票数を当選に生かす仕組み。従来の拘束名簿式は政党名のみの投票で、当選者は名簿の上位記載者から決まった。非拘束名簿式では政党名か候補者名で投票、当選者は名簿の中で個人名の得票数が最も多い候補者から決める。平成13年に導入された。

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