主張

食品ロスの削減 事業者の努力も不可欠だ

食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」が減り始めている。

農林水産省によると、最新のデータである令和元年度の食品ロスの量は、推計を開始した平成24年度以降、最少の570万トンとなった。

最少とはいえ、日本人1人当たり毎日茶碗(ちゃわん)1杯分のご飯を捨てている計算となる。

食品ロスが減っているのは、こうした無駄を「もったいない」と思う国民一人一人の意識の高まりや、食品販売を担う事業者の地道な努力もあるのだろう。

データはコロナ禍前のものであり、コロナ禍以降は外食産業の不振などで、さらに食品ロスが減っているとみられるが、これを一時的なものにしてはいけない。

飽食の日本において、将来にわたって食品ロスを削減していくには、国民を挙げた不断の取り組みが欠かせない。

それにはまず、各家庭の冷蔵庫で食材を腐らせない工夫など、食品を無駄に捨てないという消費者の心がけが大切となる。

同時に食品製造業など事業者側の努力も求められる。570万トンのうち家庭系での食品ロスは261万トンだった。事業系は309万トンと54%を超えている。面白いのは、製造工程で廃棄される食品残渣(ざんさ)を別の食品製造などに活用する事業所の取り組みだ。

アサヒグループホールディングス(GHD)は昨年10月から、東京・蔵前のパン店「マルセリーノ・モリ」で余った食パンの耳をビール原料に使用し、食品ロス削減につなげている。パンの耳はビールの風味付けに使用され、使用量は月40キロ超になる。

もともとは、蔵前のコーヒー焙煎(ばいせん)店「縁の木」(白羽玲子代表)が、コーヒー豆から出る抽出かすを集めて資源とし、アサヒGHDに提供したことから始まった。豆の抽出かすは、肥料やカップの製造につなげている。資源の回収は障害者支援のNPO法人「つなぐ台東」が請け負っている。

地域循環型の「KURAMAEモデル」と呼ばれる事業だ。食品ロスを減らすだけでなく、地域内の資源を補完し合うことで、地域の活力を最大限活用する効果が期待できる仕組みだ。縁の木には問い合わせも多いといい、今後、全国への広がりが期待される。

無駄を少しでも減らす国民的な機運を高めていきたい。

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