亀田家から独立 3兄弟の末弟・和毅の野望

兄の興毅氏が会長を務めるジムを離れた亀田和毅。新たな所属先で世界王座返り咲きを目指す=4月22日、兵庫県西宮市
兄の興毅氏が会長を務めるジムを離れた亀田和毅。新たな所属先で世界王座返り咲きを目指す=4月22日、兵庫県西宮市

プロボクシングの「亀田3兄弟」の三男で元世界2階級王者の亀田和毅(ともき)(30)が、長兄の興毅(こうき)氏(35)が会長を務める3150(サイコー)ファイトクラブとの所属契約を解消、亀田家からの「独立」を決断した。「世界チャンピオンに返り咲くため、より厳しい環境で自分を磨きたい」。15歳で単身メキシコに渡り、長く海外を主戦場としてきた和毅。今後は挑戦の舞台を国内に移し、日本ボクシング界の至宝、井上尚弥(29)=大橋=とのビッグマッチを目標に掲げる。

史上初の3兄弟世界王者

和毅は4月22日、兵庫県西宮市に新設されたTRYBOX平成西山ジムへの移籍を発表。3月限りで3150ファイトクラブとの契約を解消しており、「亀田家から離れ、15歳でメキシコに行ったときの強い気持ちを持って、最後のボクシング人生でどこまで通用するか全力でチャレンジしたい」と決意表明した。

2008年11月にメキシコでプロデビューした和毅は13年8月、世界ボクシング機構(WBO)バンタム級王座を獲得。日本人で初めて3階級制覇を果たした興毅、世界ボクシング協会(WBA)フライ級王座を2度防衛した次兄の大毅に続き、史上初の3兄弟世界王者となった。18年11月には世界ボクシング評議会(WBC)スーパーバンタム級暫定王座を奪取し、2階級制覇を遂げている。

日本でスポットライトを

ただ、2人の兄と同様に世界王者となってからも、心に引っかかるものがあった。41戦38勝(20KO)3敗の戦績を誇るが、8度の世界戦のうち国内で戦ったのは2試合だけ。長く海外に主戦場を置いた事情もあり、日本国内で脚光を浴びた経験が少ないのだ。

「日本で応援していただいている方の目の前で戦いたいという気持ちが一番強い。まだまだ動けるし、35歳ぐらいまでやれると思っている。最後は日本でもう一回、王者になりたい」

兄の興毅氏が会長を務めるジムを離れ、TRYBOX平成西山ジムに移籍した亀田和毅(右)。所属ジムの西山一志会長と記者会見に臨んだ=4月22日、兵庫県西宮市
兄の興毅氏が会長を務めるジムを離れ、TRYBOX平成西山ジムに移籍した亀田和毅(右)。所属ジムの西山一志会長と記者会見に臨んだ=4月22日、兵庫県西宮市

記録よりも記憶に残る選手に。世界王座を獲得する前年の12年12月、WBAバンタム級王座統一戦に臨む興毅の前座でノンタイトル戦を戦った和毅は、こう話していた。「強い相手と戦って認めてもらいたい。日本で今、評価されているのは山中慎介選手。そういう相手に勝って、みんなを黙らせたい」。

「神の左」と呼ばれた左ストレートを武器に、WBCバンタム級で12連続防衛を果たした強打者の名を挙げ、スポットライトを浴びることを渇望していた。

井上尚弥との対戦切望

現在、WBAスーパーバンタム級で3位にランクされる和毅の1階級下には、日本が世界に誇るチャンピオンがいる。WBA、国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級統一王者の井上だ。井上との対戦について水を向けられると、躊躇(ちゅうちょ)なく言い切った。

「日本が盛り上がるのであれば絶対にしたい試合。今年王者になって、来年に井上チャンピオンが(階級を)上げてきたときに挑戦を受ける試合ができたら、最高かな」

和毅は王座返り咲きを最優先に考えており、興毅氏のジムとの路線の違いも移籍の背景にあるようだ。3150ファイトクラブは、ボクシング界を盛り上げようとライト層の注目を引きつけるマッチメークを推進。芸能人らのリング挑戦をプロデュースするなど、ショーアップした興行スタイルを打ち出している。

「プロボクシングという競技は常に危険と隣り合わせであり、さまざまなリスクがある中で、ジムが運営停止を余儀なくされた場合などのリスクヘッジの意味でも、二極化することがおたがいのためになるという考えにいたった」。興毅氏は和毅の所属先変更に際し、こう説明している。

派手なパフォーマンスとビッグマウスで、良くも悪くもボクシング界を盛り上げた「亀田三兄弟」で唯一の現役ボクサー。亀田家から独立した末弟は、新たな亀田ブランドを作り出すことができるか。(上阪正人)

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