社説検証

仏大統領選 各紙がマクロン再選を歓迎 産経「対露制裁で指導力を」

フランス大統領選決選投票で再選を決め、支持者の前で拳を突き上げるマクロン大統領 =4月24日、パリ(ゲッティ=共同)
フランス大統領選決選投票で再選を決め、支持者の前で拳を突き上げるマクロン大統領 =4月24日、パリ(ゲッティ=共同)

フランス大統領選でマクロン氏が再選を果たした。ロシアによるウクライナ侵略で東西冷戦後の国際秩序が崩壊しつつある中、今年に入ってプーチン大統領と何度も首脳会談を行ったマクロン氏の外交手腕が問われている。

大統領選でマクロン氏は、極右「国民連合」を率いるルペン党首と競り合いを演じた。エネルギー価格の高騰による物価高に強い不満を持つ労働者層に支えられたルペン氏が支持を広げた。マクロン氏は外交だけでなく、内政でも「分断」の克服が大きな課題となる。

産経は「マクロン氏の再選は、フランス国民がロシアへの経済制裁による物価高騰という痛みを覚悟し、侵略戦争をやめさせるため対露強硬策を選択したことを意味する」と論考し、「欧州の牽引(けんいん)役として日米両国などと連携し、ロシアへの制裁で共同歩調をとる役割を期待したい」と注文を付けた。

読売は「フランスの有権者は、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)の結束を重視するマクロン大統領の続投が、自国や欧州の安定へ最善の道だと考えたのだろう」と指摘した。

そのうえで「仮にルペン氏が当選していたらウクライナ問題を巡り、EUやNATOは大混乱に陥り、欧州の安定が損なわれていただろう。最悪の事態は回避できたと言える」と訴えた。

朝日も「ロシアへの制裁に反対し、欧州の軍事機構の指揮系統から外れるとのルペン氏の公約は、実行されれば国際秩序への新たな打撃となっただろう」としたうえで、「選挙結果は極めて穏当というべきだ」と断じた。

マクロン氏が苦戦した要因を分析したのは毎日だ。「経済のグローバル化で失業したり、成長の恩恵にあずかれなかったりした労働者の間には、『富裕層を優遇している』との根強い批判がある」と論じた。

そして同紙は「自国第一主義を批判し、国際協調を重視するマクロン氏の再選を、欧米や日本の政府は歓迎している。『メルケル氏後』のリーダーとして責務を果たす時だ」と期待感を示した。

日経も「既存政治に反発し、ポピュリズム的な政策が多くの支持を得るという危うさが改めて浮き彫りとなった。これはフランス特有の現象ではない」と論考した。そのうえで「ウクライナ侵攻をきっかけに急激な物価上昇に見舞われ、現政権への不満が高まっている多くの国に共通することだとわれわれは認識すべきだ」と警告した。

欧州は、ロシア産の天然ガスに強く依存しながら脱炭素を進めてきたドイツの存在感が急速に低下する一方、原発大国として各国に電力を供給するフランスの立場が相対的に強まっているといえる。

産経は「フランスは国連安全保障理事会の常任理事国で先進7カ国(G7)のメンバーでもある。ロシアにエネルギーを大幅に依存するドイツに代わり、存在感を高めつつある」として、フランスが対露制裁で指導力を発揮するように求めた。

読売も「マクロン氏は、EU加盟国間の安保協力や、天然ガスなどの調達の『脱ロシア』化、原子力発電への回帰を提唱してきた」としたうえで、「ロシアとの経済関係が深いドイツとの温度差を埋めながら、仏独でEUを牽引してもらいたい」と訴えた。

ロシアによるウクライナ侵略は、ロシアと国境を接する日本にとっても決して対岸の火事ではない。国際的な対露制裁の実効性を高めるため、わが国もロシアから液化天然ガス(LNG)などの資源輸入を早期に停止する決断が求められよう。(井伊重之)

■フランス大統領選をめぐる主な社説

【産経】

・対露制裁で指導力発揮を

【朝日】

・国内外の分断修復を

【毎日】

・欧州安定に役割果たす時

【読売】

・欧州の安定へ重責を果たせ

【日経】

・マクロン氏は分断埋め欧州の結束固めよ

(いずれも4月26日付)

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