輸入小麦価格がロシアのウクライナ侵攻や北米での不作などで高騰し、小麦の大半を輸入に頼る日本の食卓に影響を及ぼし始めている。一方、米価は新型コロナウイルス禍で落ち込んでいる。こうした状況の中、新潟県内の農業法人が米からの転作で小麦生産に挑戦し、6月には初の本格的な収穫を迎える。そこには日本の課題が凝縮されていた。
米価下落
農業法人は、県内有数の穀倉地帯、新潟市西蒲区にある「新潟ひかりっこ」。もみ殻を熟成させた自然素材の堆肥でコシヒカリを栽培し、「ひかりっこ米」のブランドで都内大手百貨店などで販売している。同社が小麦生産に乗り出した背景の一つは、近年の米余りによる米価下落だ。
新型コロナウイルス禍で飲食店やホテルなどが使う業務用米の需要が大きく落ち込み、米価もそれに伴って下落。国は補助金を出して、米以外の作物への転作を奨励している。
斎藤隆美社長(75)は「そんなときに、東京の高級食パン店が新潟県内に出店してくるというニュースを見て、パンの原料小麦の100%近くが輸入で賄われていることを知った。米作が厳しい中で、小麦に活路を見いだせるのではないかと考えた」と話す。
折しも輸入小麦の価格は北米での不作などで高騰。さらに世界最大の小麦輸出国ロシアが同6位のウクライナに侵攻し、小麦価格の上昇に拍車をかけた。
「欧州では国の安全保障として食料自給率を高めているのに、日本は37%ほどと低いまま。多くを海外に依存し日本の食料は大丈夫なのかと心配していたところに、小麦価格の高騰が重なったことも、小麦の生産につながった」(斎藤社長)